未来のいつか/hyoshiokの日記

hyoshiokの日々思うことをあれやこれや

OSS振興に政府の支援は必要か?

経済産業省のミッションというのをわたしは正確に理解しているわけではないが、経済活動を通じて国民生活の向上を目指しているではないかと理解している。その中の政策分野としてIT産業というのがあったとして、それを振興することが国民生活の向上につながるだろうという認識の元いろいろな政策が実施されているのだろう。
我国の製造業、例えば自動車産業の国際競争力は、トヨタにしろホンダにしろ他国の同業他社を圧倒している。米国のお家芸をいつのまにかに凌駕してしまった。トヨタ、ホンダの地道な企業努力であることは間違いないが1950年代の我国の通産行政の保護主義的な産業振興策の成果というのもあると思う。官民一体となった産業振興策というのが日本の戦後の奇跡だったと言っても過言ではない。
一方で我国の情報政策というものはどのようなものだったか?IPA情報処理推進機構)に興味深い報告書がある。http://www.ipa.go.jp/about/e-book/itphist/情報政策史になっているのだがIBMに追いつき追い越せという非常にわかりやすいゴール設定から80年代に入って明確なゴールを見出せないまま迷走していっている事を示している。まちがいなく1980年代「通産省モデル」の限界が見え始めた。80年代までは研究開発資源を少数の大手コンピュータ企業(メインフレーマ)に集中させ、それを頂点とするヒエラルキー構造が形成された。
80年代、時代はそのようなメインフレーマの垂直統合型ビジネスモデルから水平統合型モデルへ大きく舵を切ったのであるが我国の情報産業政策は必ずしもその流れの中で効果的な施策を打ててはいなかった。
我国のソフトウェア産業がまったく国際競争力を持たないと言うことは論をまたない。わざわざ統計を持ちだすわけもないのだけど、ソフトウェア輸出入統計対比表*1によれば、2000年の輸出が約90億円、輸入が約9200億円、ざっと言って輸入が100倍多い。圧倒的に入超である。直感的に言ってもOS、各種ミドルウェア、アプリケーション、どれをとっても定番のソフトは圧倒的に米国製である。我国のソフトウェア産業は残念ながら国際競争力がまったくないのである。
国際競争力がない産業の代名詞のような農業ですら、農林水産省の農林水産物等の輸出について*2という資料によれば、2000年に1363億円も農産物を輸出していて、2004年にはそれが1658億円にもなっている。成長産業といってもいいくらいの急成長ぶりである。(正直、意外である)
経産省がIT産業振興をその重要な政策課題においているが、少なくともソフトウェア産業に関してはまったくと言ってその成果があがっていない。80年代までの大規模国家プロジェクトによって産業振興を図ると言うスキームはすでに破綻している。その試行錯誤の中で未踏ソフトウェア創造事業オープンソースソフトウェア基盤整備事業等々の振興策が実施されているのである。我国のソフトウェア産業振興のための一つの施策としてあえてオープンソースを道具として利用しているのである。
それでは、日本でOSS産業というのが独り立ちしているほど産業としてなりたっているのだろうか?OSS産業それ自身の統計資料というのは残念ながら見当たらなかったが、我国のソフトウェア産業のごく一部という観点から言えば、お寒いというのが実情だろう。少なくともわたしの実感としてはそんな感じだ。
まあ、いろいろ数字をあげてもしょうがないのだけど、OSSどころか日本のソフトウェア産業はしょぼい。超しょぼい。絶望的にしょぼい。
しょぼいからといって政府に振興策を依存するのはいかんという論もありうる。昨今の小さい政府論だ。民間にまかせとけばいいのである。しょぼいのは民間の努力が足りないからという議論である。
まあ、ITと言わず、産業構造そのものを米国一国依存でいいというのならそれもいいだろう。別に無理矢理ナショナリズムをあおるわけではないが健全なソフトウェア産業すら国内にない国が21世紀世界で尊敬される国になりえるのか?OSベンダーもない、ミドルウェアベンダーもない。高度IT人材もいない。そんな国を我々は望んでいるのか?
ただ、政府振興策というのはモラルハザードがおきうるという点について肝に銘じておく必要はあるだろう。
OSSにとってどのような支援策が必要とされているかは別途しるしたい。