未来のいつか/hyoshiokの日記

hyoshiokの日々思うことをあれやこれや

仕事で文書を書く必要がある人は理科系の作文技術を読むべきだ

仕事で文書を書く必要がある人は「理科系の作文技術」(ISBN:9784121006240)を読むべきだ。

ここでいう仕事で書く文書というのは他人に読んでもらう文書をさす。他人に読んでもらうことを前提としないメモの類や狭義の日記などはこれにあたらないので、どう書こうが構わない。他人に読んでもらうことを前提とした文書は、相手に内容が伝わらなければ意味がないのだから、間違いなく相手に通じるように表現しなければならない。

小説、詩などの文学作品は、ここでいう「仕事で書く文書」に含めないことにする。文学作品と対比して、仕事で書く文書の特徴はどこにあるのか。それは、読者に伝えるべき内容が事実と意見にかぎられていて、心情的要素を含まないことである。

仕事の文書を書くときの第一の原則は、「必要なことは洩れなく記述し、必要でないことは一つも書かない」ことである。何が必要かは目的により、また相手の要求や予備知識による。推敲によって必要でないことを削るという作業を忘れてはならない。

第二の原則は、事実と意見(判断)との区別を明確にすることが重要である。

第三の原則は、記述の順序について二つの要求にこたえることである。すなわち、一つは文章ぜんたいが論理的な順序にしたがって組み立てられていなければいけないこと。そして、もう一つは読者はまっさきに何を知りたがるか、情報をどういう順序にならべれば読者の期待にそえるか、ということに対する配慮にこたえることだ。

第四の原則は、明快・簡潔な文章をこころがけることだ。

本書は仕事で書く作文の技術が、明確にわかりやすく述べられている。わたしは、学生時代読んで、初めてパラグラフ機能を知った。それまでは、なんとなく文章が長くなったから、ここらへんで段落を入れておくかくらいの意識しかなかったが、本書で、その機能を明確に教えてもらった。

本書を読んだからといって、書かれていることをすぐに実践できるというわけではない。水泳の教科書を読んだからといって泳げるようになれるとは限らないのと一緒だ。しかし、いくつかの原理原則を理解し、それを心にとめながら文書を書くのと、無頓着にだらだらと記すのでは、長い目でみればずいぶん違うところにたどり着くと思う。もちろんこのブログのエントリーも「理科系の作文技術」で学んだことを意識して書いた。

本書は、タイトルに「理科系の」と書かれているので、文系の人が、自分には関係ないと思ってしまう可能性があるが、「他人に読んでもらう文書」を書くことに文系も理系もないので、文系の人にも参考になると思う。確かに例としている文が物理学の論文から引いているものや、実験報告書の類からのものがあるので、ちょっととっつきにくい感じがあるかもしれないが、仕事で文書を書くときの心得として抑えておかなければいけないヒントに満ちている。

仕事の文書を読む機会が多いが、何を言いたいのかよく分からない文書を読まされるたびに、最低限、「理科系の作文技術」で紹介されていることぐらい理解しておいて欲しいと思う。内容の精選、事実と意見の区別、記述の順序、明快・簡潔な文章を心がけて欲しい。

今回、このエントリーを書くにあたって、各パラグラフのトピックセンテンスを最初の文としたので、各段落の最初の文を取り出すと要約になる*1

まとめ

  • 仕事で文書を書く必要がある人は「理科系の作文技術」を読むべきだ。
  • ここでいう仕事で書く文書というのは他人に読んでもらう文書をさす。
  • 小説、詩などの文学作品は、ここでいう「仕事で書く文書」に含めないことにする。
  • 仕事の文書を書くときの第一の原則は、「必要なことは洩れなく記述し、必要でないことは一つも書かない」ことである。
  • 第二の原則は、事実と意見(判断)との区別を明確にすることが重要である。
  • 第三の原則は、記述の順序について二つの要求にこたえることである。
  • 第四の原則は、明快・簡潔な文章をこころがけることだ。
  • 本書は仕事で書く作文の技術が、明確にわかりやすく述べられている。
  • 本書を読んだからといって、書かれていることをすぐに実践できるというわけではない。
  • 本書は、タイトルに「理科系の」と書かれているので、文系の人が、自分には関係ないと思ってしまう可能性があるが、「他人に読んでもらう文書」を書くことに文系も理系もないので、文系の人にも参考になると思う。
  • 仕事の文書を読む機会が多いが、何を言いたいのかよく分からない文書を読まされるたびに、最低限、「理科系の作文技術」で紹介されていることぐらい理解しておいて欲しいと思う。

*1:トピックセンテンスとはパラグラフで主張する事柄について述べた文である。そしてパラグラフには一つの主張しか書いてはいけなのである