未来のいつか/hyoshiokの日記

hyoshiokの日々思うことをあれやこれや

社外勉強会を社内でやることの意義

企業に取って従業員が自主的に勉強会を開催する意義というのは、(1)社員の知識、スキル向上、(2)社員のモチベーションアップ、(3)社内の活性化、などなどいろいろある。まあどうとでも言えるというと語弊があるけど、定性的なメリットはいくらでも言える。定量的なメリットについて言うのはなかなか難しいが、定量化できないからといって、まったくやらない、あるいはその意義を無視する、あるいはその意義を過小評価するというのは、あまり賢い方法ではないと思う。

一方で勉強会を開催するデメリット、コスト、リスクなどについて考えると、コストは勤務時間外でやるので、ほとんどかからない、リスクというのもほとんんどないと思う。

やらないことのデメリット(機会利益の損失)は、やることのメリットのちょうど裏返しである。大きな企業であれば、事業部間をまたがった横串の関係が出来上がって、緩い情報共有などが出きるというメリットもある。インフォーマルな関係の構築ができるということである。

さて、社内勉強会はかくもメリットがあり、コストやリスクも低いので、気の利いた企業であれば多かれ少なかれ開催していると思うが、これがなかなかうまくいっていないという話もよく聞く。やってみたんだけど、今ひとつ盛り上がらなくていつの間にかにしょぼーんとなるとか、開催したけど出てくるメンツはいつも一緒だとか、一二度開催するのだけど持続しないとか、社内勉強会が死屍累々である。

社内SNSとかナレッジマネジメントとかもうまくいっているところとそうでないところ、盛り上がっているところと閑古鳥がないているところ。

結局それって、人が集まるということだから、まさにコミュニティマネジメントそのもので、コミュニティをどううまく運営するかと言う方法論にいきつく。

一応会社だから上司同僚部下というハイアラーキーはあるけど、レポートラインが違っていれば直接的な指揮系統はないし、自主的な勉強会であれば、職務権限で管理することは難しい。仕事の部門横断でのプロジェクトあるいはタスクフォースと呼ばれている形態と勉強会のような自主的なインフォーマルなコミュニティでは、会社から見て、公式、非公式という以上に参加者のモチベーションが違うような気がする。

成功するプロジェクト、チームというのはゴールを共有し高いモチベーションを持つという共通点があると言われているが、持続するコミュニティというのは、参加者のモチベーションの維持というのが、ほとんど唯一の成功要因の気がする。

で、社内勉強会であるが、閑古鳥が泣くコミュニティというのは、やはり、参加者が固定したり、話題が今ひとつ興味の持てないものであったり、実務が忙しくてそれどころじゃなかったりと、参加者が何がなんでも参加したいというモチベーションを維持できなくて、いつの間にかになくなっていたりするというのが実態なのではないかと想像する。勉強会の蛸壺化といってもいい。出口が見えなくて疲れてしまうという感じだ。

そこで、社内勉強会の活性化の切り札が、社外から講師を呼んでしまうとか、社外勉強会を自社の施設で開催するとかいう技である。

例えばGoogleではTech Talkという名の講演会を開催していて、それは著名な技術者を呼んで社内技術者向けに話をするという形式のもので、不定期に行っている。これなどはまさに、最先端の技術の動向を社外技術者によって語ってもらうことで、社内技術者の知識向上や活性化を図るという意図で行われている。

先日の第98回カーネル読書会*1も同様の意図で楽天で開催をしてみた。大きな組織で忙しく仕事をしていると視野がどんどん狭くなるという危険性が常に孕んでいるが、社外のまったく違う視点からの講演を聞くということはいろいろな意味で刺激を受けるし、技術者の活性化にもつながる。

実際、カーネル読書会をやってみて、現場のエンジニアたちが、自分たちのやり方とまるっきり違うやりかたで問題に取り組んでいるという発表を聞き、いろいろな議論が社内で巻き起こり、自分たちの仕事を見直すきっかけになったりした。これこそが社内の活性化であり、蛸壺からの脱却である。その成果が出るにはもちろんもう少し長い時間がかかる。しかし、定常的に外部からの刺激を与え続けることは組織運営においても個人においても絶対必要なことで、どよーんとした空気にならないためにも続けたいと思う。

社内だろうが社外だろうがコミュニティが存続するには、そのようなある種狂気に満ちた確信犯が自分の意志に素直になって旗を振り続ける、それに尽きると思う。カーネル読書会を続けるのはそのような狂気であり狂喜でもある。

技術者が蛸壺に入って出てこないような状況を打破するためにも社外勉強会を社内に呼び込み、空気をかき混ぜ拡散し狂気を注入する。

組織におけるナレッジマネジメントだとかコミュニティオブプラクティス(実践コミュニティ)をどうするかという議論があるが、一つの策は上記のような社外の空気を積極的に社内に引き込む、それを定常化する仕組みを作るというようなことで行えるのではないかと思う。

カーネル読書会の実験はまだまだ続くのである。