未来のいつか/hyoshiokの日記

hyoshiokの日々思うことをあれやこれや

自分にとっての情熱プログラマー

先日、情熱プログラマー読書会が楽天であったので、参加した。LT(Lightning Talks)で発表もした。発表スライド 情熱プログラマー
自分にとっての情熱プログラマーってなんだろうと考えた。

この「情熱プログラマー」という書籍は、ソフトウェア開発者の幸せな生き方という副題がついているのだが、純粋な技術書というよりもプログラマーにとっての自己啓発書みたいな位置づけの書籍だ。

ソフトウェア開発におけるプログラマという役割を取り替え可能な部品のような立場から見れば、プログラマはコストであり、どのようにしてそのコストを削減するかということになる。コストを安くするという考えで行けば年功序列的な賃金体系の中ではベテランより若いひとを使った方が安く上がる。数字でソフトウェア開発を見ていけば人月工数がすべてであり、開発コストは工数*人月単価になる。

そのような立場で言えば人件費の高い日本で開発するのではなく、インドや中国にオフショアするのが合理的な選択になる。

そのような時代背景のなかでプログラマである自分は一体どうやってサバイブするのかという問題に本書は取り組んでいる。

まあ、前提条件となる、プログラマが取り替え可能な部品という考えは半分は当たっているかもしれないが半分は間違っている。ソフトウェアはヒトが作る。ロボットが作るわけではない。そのヒトに焦点をあてたソフトウェア開発というのが昨今流行りのアジャイルソフトウェア開発の真髄である。しかしソフトウェア開発の素人にとってみれば、達人プログラマも素人のぺーぺーも大して違わないという風に見えてしまう。

ソフトウェア開発のプロフェッショナルに言わせれば素人とプロフェッショナルは厳然とした違いが見えるものだが、残念ながら素人にはそれが見えない。そしてソフトウェア開発の現場を管理している偉い人の多くは素人なので、ソフトウェア開発にまつわる悲喜劇がそこに発生する。

素人が素人を使ってソフトウェアを作っていてもいいものが作れるわけがないのだが、プログラマを交換可能な部品あるいは単なるコストとしかみれないので、そのような状況が発生する。

問題はソフトウェア開発の諸問題についてのプロフェッショナルが開発の現場にほとんどいないこと、あるいは中間管理職、経営層にそのような問題を理解している人がほとんどいないことである。その問題に立ち向かうには、ソフトウェア開発のプロフェッショナルが偉くなるか、偉い人に分かる言葉でソフトウェア開発の本質的な難しさを伝える以外このような悪循環は立ちきれない。

情熱プログラマーという本は、ソフトウェア開発者に向かって、単にプログラムを嬉々として作っているだけではだめで、顧客に向き合い、顧客に取って価値のあるものを作りつづける、そしてその成果についてためらうことなくアピールすることの重要性を繰り返し語っている。

価値のあるものを作るためには自分自身の技量を高めなくてはいけなくて、そのために日々の研鑽を怠るなということを説く。無人島に住んでいるわけではないので、顧客とのコミュニケーションを怠ってはいけない。自分の提供できる価値を顧客にとっての価値として表現する事をためらってはいけない。そのコミュニケーションのことをマーケティングというわけであるがプログラマーもその手のテクニックから学ぶことは多々ある。そして考えるだけではなく、なんでもいいからやってみろと背中を押す。

プログラマーにいとっての実践的なサバイバルガイドだ。

翻って自分はどうだったのだろうか。

大学を卒業して以来20数年、この業界で飯を食ってきた。わたしの仕事がインドに行ってしまって失業の憂き目に会うということは幸運にもなかった。自分の給料を払ってくれる会社に転職してどうにかこうにか生きている。

プログラマはコストではなく価値を産むエンジンである。そのように信じている。ソフトウェア開発においてプログラマをコストとして単純化してとらえることの愚についても偉い人にも説明している。

単なるコストではなく価値を産むためにはどうすればいいかというヒントに満ちている本でもある。

プログラマではない人々におすすめしたい一冊である。

情熱プログラマー読書会当日

2010-04-28 情熱プログラマー読書会 http://www.youtube.com/view_play_list?p=5FC80DA1036A45C5

主催者Kwappaさんのブログ http://kwappa.txt-nifty.com/blog/2010/04/study2study-208.html

Twitterまとめ http://togetter.com/li/17438

id:kogee楽天側の仕切りをやっていて、会場の予約、各種イベント申請などの実務を行った。楽天の社員がボランティアでお手伝いをした。今回はわたしは仕切り側というよりもお手伝い側で関わったのであるが、若手社員がどんどんこのようなイベント開催をするというのは実に素晴らしいと思った。楽天の芸風が変わりつつあると感じている。そして、それは、イベント運営に参加した一人一人にとっても何がしかのプラスをもたらすだけではなく、楽天という組織にとっても、コミュニティにとっても利益があったと考える。