未来のいつか/hyoshiokの日記

hyoshiokの日々思うことをあれやこれや

Twitterの書き込みをきっかけに仕事についてあれやこれや考えてみた

先日、@tsudaさんが、http://twitter.com/#!/tsuda/status/26536546973

なので、エンジニアの方は、転職を今現在考えてる、考えてないは関係なく、エンジニアが「金銭」以外の条件で職場に求める条件/環境/待遇などを書いていただければありがたいです。もしお手間でなければハッシュタグ #engineerenv を付けていただければ。

なる書き込みをしていて、ハッシュタグでいろいろ議論が炸裂していた。下記にまとめがある。 http://togetter.com/li/57088

今の職場の(1)良いところ(あれやこれや)、(2)悪いところ(あれやこれや)と、仮に転職するとして、その候補となる会社の(3)期待値(あれやこれや)、(4)転職するにあたっての手間暇(あれやこれや)をざっくり天秤にかけて、いまのところにとどまるインセンティブA=1-2、転職のインセンティブB=3-4で、A>Bだったらいまのところに留まるだろうし、A<Bだと転職したいという気持ちにぐぐっとなる。

求人をしている会社としては、3の期待値をどのようにあげるか、そのために、エンジニアが金銭以外で求める条件/環境/待遇などをサーベイして、実現コストが低くて、効果が高いと思われるものを実装して、3の期待値をあげ、結果としてBをあげる。

Aの部分は、それこそ、人それぞれ、会社それぞれなのではあるが、それでも一般論として、重要視したいこと、最低限必要なこと、あったらうれしいことなどいろいろある。

転職は面倒だ

実のところ、転職というのは非常に面倒で、出きることならしないですませたいと多くの人が思う。通常4の手間暇が大きいので、ちょっとやそっとのことでは、なかなか転職には踏み込めない。もちろんそれをどう感じるかは人それぞれなので、1年に一度位の頻度で転職している人もいなくはないが、例外的な人であろう。

引越しみたいなもので、引越しそのものを好きな人は別として、できれば、そんな面倒なことはしたくはないが、生活スタイルが変わったり、結婚、出産したり、あるいは、職場が変わったりして、外的要因で引越しをしたりする人もいる。それと同じで、転職も、できれば、そんな面倒なことをしないですむならしないにこしたことはないが、会社の業績が悪化して、Aが急速に減少したり(給与が下がったり、待遇が悪化したり)、あるいは、自分の興味の持っている業界が急成長して、非常に魅力的に思え、Bが上昇し、AとBのバランスが、A>BからA<Bへ移ったときに決断をしたりする。*1

Twitterの書き込みをみていると、意外と2についてあれやこれや書いている人が多い。それって、結構ブラックだよなあというような書き込みが少なくない。あるいは、1あるいは3についても、本当にささやかな願いだねえ、みたいなものが少なくない。*2

仮にこれらの条件を当たり前条件ということにする。例えば福利厚生が業界水準以上というような条件だ。この当たり前条件で、魅力的な職場を作ることは不可能ではないかもしれないが、大変難しい。

魅力的条件ってなんなんだ

問題は魅力的条件(1ないし3)というのは、一体なんなのだ、ということである。(ここで話が振り出しに戻るわけである)

共通の価値観を持つことは非常に重要で、職場の人々がそれを共有できていて、それに向かって努力しているような職場は働いていて気持ちがいい。

新卒で入社したDEC(Digital Equipment Corporation)という会社について、職場の魅力の点から評価してみよう。その当時、世界最先端の社内ネットワークがあったし、あこがれの達人も社内にはいっぱいいた。仕事を通じて学ぶことも多く、実際、自分が成長している実感もあった。社内には図書室があり、技術書、専門書も普通にあったし、JISやISOの規格書も仕事に必要であれば、購入できた。諸橋の大漢和辞典を図書室に購入してもらったこともある。自分自身は情報処理学会ACMIEEE computer societyの会員だったので、それぞれの会誌については自前で購入していたので、社内外の最先端の情報にアクセスすることに不自由はなかった。また、各種セミナーなどにもよっぽどのことがないかぎり自由に参加でき、ミッドナイトプロジェクトと称して、今のプロジェクト以外の作業を行うことを認めていた。(Googleの20%ルールというのは、その当時、普通にあったのである)。

10年もいた会社をなんでやめたかというと、会社の業績が急速に悪化して2が1を上回ったからである。ご承知のとおり、DECはCompaqに買収され、CompaqはHPに買収され、いま、DECという会社は存在しない。DECは今で言うところのTechnology-Centric Cultureを持った会社であった。しかしながらビジネスは下手であった。IBMは生き残ったが、DECは消滅した。

ビジネスでサバイバルできなければ、何の意味もない。その上での、魅力的な職場とは何か。(またまた話は振り出しに戻るわけである)

自分の価値観

わたしは、OSSとか勉強会を奨励する会社に魅力を感じたりして、そのために社内でも微力を投じたりしているのであるが、その向こうにあるのは、自分が成長したいという欲望だと思う。仕事によって成長し、さらに自分のレベルを高めるために、OSSや社外の勉強会に出て切磋琢磨するというイメージである。もちろん、そのようなことに価値観をみい出さない人もいるとは思う。

仕事によって成長するという観点にたてば、どの職場でもその仕事から学ぶことはあるわけで、では、この会社でしか経験できない仕事とは何か、それがいわゆる差別化要因になるのではないかということになる。

ただし、他社がOSSや勉強会に参加することを当たり前に奨励していたとしたら、それは魅力的な条件ではなく、当たり前の条件となる。わたし自身、一エンジニアとして考えると、OSSや勉強会への参加が禁止されるのではなく、奨励される社会の方が、絶対自分にとってもうれしいし、多くのエンジニアにとっても、いいことだと思うので、一企業に留まらず、それがふつーの当たり前の習慣になってほしいと思う。

つまり、よりよい職場環境を望み、それに向かって一人一人がちょっとした努力をして、ちょっとした行動を起こすことが、結果として自分の待遇を良くし、まわりの待遇をよくして、さらに回り回って自分の待遇もよくするということになる。

OSSとか勉強会を禁止する職場になんか転職したくないし。それが当たり前になれば、もっと別のところでエネルギーを使えるしね。

わたしなんかは、そーとー年を食っている(組織の中の相対的年齢分布では)ので、魅力的な職場を作るみたいなことを考えないといけない立場にあるのだけど、上記のTwitterの書き込みなんかをみて、すごい参考になる意見もあれば、これはどーかなという意見もある。

その中で、一連の@yuguiさんの書き込みは非常に参考になり、共感するところも多い。http://twitter.com/#!/yugui/status/26609377333

(次の転職先決定にあたり重視したこと1) 技術的挑戦 (2)自分の理想の実現に資する事業をやっていること (3)自分よりも優れた技術者が沢山 (4)技術的負債を償還する継続的体質 (5)面白そうな社内開発者コミュニティ #engineerenv

Yuguiさんよりも優れた技術者が沢山いるという会社はそうはないと思うが、若い人にとって、目標になる技術者を育てるという価値観を共有する組織というのは作れると思う。

技術の達人としてキャリアを積める環境…

具体的には、技術系キャリアパスと管理系キャリアパスを二つ設け、技術の達人としてキャリアを積みたいと考えている人にその処遇を提供する。これは、ある程度大きな組織でないと実施することが難しいかもしれないが組織としてそのようなメッセージを出すことは重要である。

技術系キャリアパスを突き詰めると、結局のところ、会社の枠組みでは収まりきらないところに行き着くと思う。会社の事情にたけたというだけで、その道の最高峰に上り詰めるということは多分ありえない。いやまったくないということはないかもしれないけれど、その会社だけが独占的で特殊な技術を持っていて、世界でその会社しかその技術を極めていないというありえないくらい特殊な世界であれば、そうかもしれないが、ふつーは、そーゆーことはない。

例えば、DECのGordon BellもBill Strecker(DECのPDP-11とかVAX-11/780を作ったすごい人)は会社の枠組みを越えてコンピュータ産業にインパクトを与えた人だと思う。イノベーションを起こした人たちだ。若い人たちは知らないと思うけど、わたしにとっては彼らはとんでもない殿上人、憧れの人、アイドルだった。*3

そのような達人が社内にいるというのが理想像であるが、OSSのおかげで技術者がある特定の一社に囲い込まれることが相対的に少なくなってきた。あこがれのあの達人と、OSSであれば一緒に仕事が出来る。そのような機会も増えた。仕事というほど大げさな話ではなくても、勉強会にいけば、そのようなその道の達人と知り合うことができる。

その道の達人がOSSやインターネットのおかげで可視化されてきて、そのような達人(尊敬する技術者)がその組織にいるということが分かってきた。そして、ブログやTwitterや、書籍や、様々なメディアを通して、その人の価値観や仕事などが見えてくるようになってきた。

結局のところ、そのような達人がいる組織というのは、その達人がいるという事実によって、差別化され、より魅力的な職場に見える。そして、より魅力的な職場にみえることによって、そのような職場には、魅力的な達人がさらに集まるという好循環が発生する。

ハッカーにとって魅力的な職場とは

では、例えばOSSの達人(ハッカー)たちにとって魅力的な職場とはなんなのだろうか。彼らはどのような価値を重要視するのだろうか。そして、そのような価値をどのように醸成すればいいのだろうか。Hacker-centric culture (先ほどTechnology-Centric Cultureといったものをさらに先鋭化したイメージである)というのはどのようなものだろうか。

ハッカーハッカーによってしか発見できないし、ハッカーは先輩ハッカーから学ぶことによってしか育たないと思う。したがって、かつてはそれはMITとかUCBとかWIDEとか小さいコミュニティにしか、発見できなかったのであるが、インターネットとOSSによって地域や組織を越えて広がりを見せてきて、日本の中にも、そのようなハッカーを雇用している企業が多くはないけど出現している。

小さい組織であれば、ハッカーの価値観を尊重しつつビジネスと折り合いをつけることは難しくないかもしれない。しかし、大きな組織で、従来型の価値観とコンフリクトを起こすような場合、それを貫き通す事は必ずしも容易ではない。

自分にとってそれが一つのチャレンジだと思っていて、いろいろ試行錯誤している。みなさまのご意見、コメントを待ちたい。#hackerenv というハッシュタグで議論を深めていただければ幸いである。漠然としたものを言語化することによって、ハッカーの価値観や大事にするものが見えてくると、それは、ハッカーだけではなく、多くの人(例えばギークとスーツと呼ばれている、、スーツな人々にとっても)、価値があることかと思う。

なんだか、わけのわからないとっちらかった日記になったけど、よろしくお願い致します(ぺこり)。

*1:わたし自身は、面倒くさがりやで、出不精で、元来は引きこもりなので、出来れば、転職などをしないですむならそれにこしたことはないなどと思っている口なのであるが、大学を卒業して26年間で、3回転職をしている。それぞれ、10年強、6年弱、9年強という勤続年数だ。

*2:良好な人間関係・予算がちゃんとあってケチじゃない・職場がいい立地・勤務時間が良識的・福利厚生がいいと尚可 http://twitter.com/#!/tsuda/status/26536824464

*3:http://h50146.www5.hp.com/products/software/oe/openvms/history/vaxvms20/chap03.html VAX&VMSものがたり