未来のいつか/hyoshiokの日記

hyoshiokの日々思うことをあれやこれや

証言 班目春樹 原子力安全委員会は何を間違えたのか?

読んだ。特に期待をしていたわけではないのだが、予想以上に面白かった。

わたしのような素人の外野はいくらでも言えるが感想を一言二言。

班目春樹原子力安全委員会委員長の証言をもとに構成された。

地震で外部電源が喪失し、非常用の自家発電装置が津波によって破壊され全電源が喪失するという事態においてはなす術がまったくない。

国の安全基準は、全電源喪失の事態を想定しなくていいとなっているために、福島第一もそれに対する対策を持っていなかったし、過酷な事故が発生するという想定をしていなかったので、非常事態に陥った時の周辺住民の避難に対するマニュアルも存在しなければ訓練も行われていなかった。

事故後の対応について時の首相の対応がよくなかったとか班目委員長の対応が専門家の信頼を損ねたとかいろいろ言われた。

今回、この本を読んで思ったのは、原子力発電所において電源が全く失われたら、メルトダウンを起こして制御不能になるのは、首相が誰であろうが原子力安全委員会委員長が誰であろうが必然ということである。

確かに現場が混乱している時にヘリコプターで現地に飛ぶというのはどう考えても事態の収拾に役に立つとは思えないけど、結果論ではあるが、その時点ではすでに収拾不可能な事態になっていたので何をやったとして水素爆発は防げなかったのである。

例えば、全交流電源喪失(SBO)については、米国では1988年にSBO規制を定めて、四時間から十六時間の停電を想定して対策を立てるように義務付けると同時に、雪やハリケーン、竜巻といった自然現象の発生も考えて対策をとるように求めています。
一方、日本では、原子力安全委員会の安全設計審査指針の解説で「長時間にわたるSBOは、送電線の復旧または非常用交流電源設備の修復が期待できるので考慮する必要はない」となっていました。194−195頁

歴代の原子力安全委員会の委員たちが先送りにしていたつけが福島第一で発生したのである。

事故後三週間ほどたった三月末に原子力安全委員会の元委員長など十六人が事故についての緊急提言を行った。

班目氏はその提言について

提言も結構ですが、事故の原因は、日本の規制が改善されてこなかったこと、つまり新たな知見の導入を先送りしてきたことによって、海外では当たり前の安全性向上のための対策が日本では全く考えられていなかったことにあります。その先送りをよしとしてこられた張本人の先輩方が、自分は第三者のような顔をして、とぼけた提言を出されたことについては、怒りを通り越して、あきれてしまいました(168頁)

なにかブラックジョークをみるようなお話である。

国会の事故調査委員会の報告書を読んでみたくなった一冊である。