未来のいつか/hyoshiokの日記

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モチベーション3.0を読んだ

モチベーション3.0(ダニエル・ピンク著、大前研一訳)を読んだ。


ツィッター向けのまとめ。
アメとムチは前世紀の遺物。「モチベーション3.0」によると、二十一世紀の職場では「自律性」「マスタリー」「目的」へのアップグレードが必要。277ページ

カクテルパーティー向きのまとめ

『モチベーションの話となると、科学の知識とビジネスの現場にはギャップがある。ビジネスにおける現在の基本ソフト(OS)は、外部から与えられるアメとムチ式の動機付けを中心に構築されている。これはうまくいかないし、有害な場合も多い。アップグレードが必要なんだ。科学者たちの研究成果がその方法を示している。この新しいアプローチには三つの重要な要素がある。一つは「自立性(オートノミー)」ーー自分の人生を自ら導きたいという欲求のこと。二番目は「マスタリー(熟達)」ーー自分にとっての意味のあることを上達させたいという衝動のこと。三番目は「目的」ーー自分よりも大きいこと、自分の利益を超えたことのために活動したい、という切なる思いのことだ。277ページ』

本を読んで感想を書くことは書評を書くことと似ているけどちょっと違う。書評は、本の紹介とそれに対する評論という機能がある。一方、この日記で本を読んで感想を書くことは、本の紹介とか評論とかがメインではなく(もちろんそれも若干あるけど)、その本から得た気づきなどをまとめておくことで、自分にとっての備忘録の機能や、何か新しい行動の道しるべになることを期待している。

勉強会に行った時の日記のエントリーもそれに似ている。あくまで自分目線の備忘録であり、気づきであり、決意表明だったりする。議事録でもなければ、詳細なレポートでもない。

アメとムチの致命的な7つの欠陥

前世紀の遺物、モチベーション2.0というのはアメとムチで人々を動機付け働かせる方法論だ。アメとムチがたいていうまく行かないことを、様々な事例で説明している。

  1. 内発的動機づけを失わせる
  2. かえって成果が上がらなくなる
  3. 創造性を蝕む
  4. 好ましい動機への意欲を失わせる
  5. ごまかしや近道、論理に反する行為を助長する
  6. 依存性がある
  7. 短絡的思考を助長する (93ページ)

時はまだ1995年ごろ。二つの百科事典について、どちらが成功するか予測する。一つ目はマイクロソフトが出す百科事典で、プロのライターや編集者に依頼し、多数の項目を有料で執筆してもらうもの。二つ目は企業が発売するものではなく、何十万人もの人が自分の楽しみのために記事を作成したり編集したりする。これに参加するのに特別な資格は必要ないし、金銭的な報酬は一切ない。そして、この百科事典はオンラインで無料公開される。さて、2010年ごろ、どっちの百科事典が成功しているか、予測して欲しい。一方は大きく成功し、一方は提供を中止している。37ページころ

わたしたちは、もちろんその答を知っている。答を知ってはいるが、なぜそうなったかの原因についてはほとんど理解していない。いや、理解しているし、説明も明確にでき、実践しているという人であれば、本書に書いてあることのほとんどは驚くに値しないということかもしれない。

自立性とは何か。好きなことを好きな方法でやるということがなぜ生産性が高いのか。

Googleの20パーセントルールの話や、あるいはアトラシアンというソフトウェア会社が行っている木曜日の午後二時から開始するフェデックスデーの話が紹介されている。フェデックスというのは宅急便みたいなもので、次の日までに配達を保証している。フェデックスデーと言うのはそれにちなんで、次の日までに、ちょっとしたプログラミングをしてなんでもいいので作るという社内の行事である。それによってアトラシアンでは様々な製品のネタとなるようなものを造り出した。シリコンバレーベンチャーでは、社内でハッカソンと呼ばれるイベントで同様なことをしている。

外発的動機(タイプX)と内発的動機(タイプI)による行動。

モチベーション2.0の時代はこのタイプXの行動を前提に発展してきた。すなわち報酬(アメ)とムチである。それに対しモチベーション3.0は内発的動機を重視する。つまり外部からの欲求ではなく内部からの欲求をエネルギー源とする。116ページ

マスタリー(熟達)というのは、もっとその技術に対して学びたいという内発的な動機のことだ。優れた運動選手も、音楽家も、芸術家も飽くなき探究心をもってマスター(達人)になろうとする。そのようなことである。

学びに関する二つの視点。達成目標と学習目標。
TOEICで800点をとるというのは達成目標。英語を話せるようになるというのは学習目標。
英語を話せるようになると英語を話す異性の友達が出来て仲良くなれるかもしれないというのが妄想できるのが学習目標。妄想にはリミットがないので、こちらをすすんで行くと達人への道がひらける。一方で達成目標は達成しちゃうとそれで終わるので広がりがない。

マスタリーは苦痛でもある。
「かつては天賦の才だと思われていた多くの資質が、実は、少なくとも一〇年間の激しい訓練の結果であると判明した179ページ」

目的。人生の目的は金を儲けることか。

「卒業二十五周年の同窓会で、わたしたちのクラスがどんなに金儲けをしたかとか、学校にどれほど多額の寄付を納めたかではなく、わたしたちのリーダーシップが世界にどう貢献したかという点で知られるようになる。それが、わたしの願いです198ページ」

自分が何をしたいのか、人生において何を達成したいのか。それがタイプIの行動原理になる。

第三部には様々なリンクやちょっとしたチェックリストがある。

何が自分を突き動かすのか。迷った時に(いつも迷っているけど)読み返したい一冊である。お勧めする。