ヒトはどこまで進化するのか、読了
社会生物学者ウィルソンのヒトはどこまで進化するのか読んだ。
歴史学は先史学を抜きにしてはほとんど意味をなさず、先史学は生物学を抜きにしてはほとんど意味をなさない。先史学と生物学の知識は急速に増加し、その結果、人類がいかにして誕生し、なぜ私たちのような種がこの地球に存在するのかに光が当たっている。5ページ
本書は、人間が存在する意味、知の統合、アザーワールド、心の偶像、人間の未来という大項目からなっていて、前半で様々な解くべき問題が提示され、後半でそれに対応した著者の見解が示されている。
- 人間が存在する意味
- 意味の意味するもの
- 人間という種の謎を解く
- 進化の内なる葛藤
- 知の統合
- 啓蒙主義の復活
- 人文科学の不可解さ
- 社会的進化の推進力
- アザーワールド
- フェロモンに惑わされて
- 超個体
- なぜ微生物が宇宙を支配するのか
- ETの肖像
- 生物多様性の崩壊
- 心の偶像
- 本能
- 宗教
- 自由意志
- 人間の未来
- 宇宙で孤独に、自由に
著者は、「人間は宇宙で特別な地位を占めているのだろうか。個人の一生にはどんな意味があるのだろう。こうした問いに検証できる形で答えられるに十分なほど、宇宙と私たち自身についての知識は進んだと私は思う。」と生物学者でありながら、従来は哲学者の領域と思われているようなものまで踏み込んで議論している。
著者は人類はどこから来て、どこへ行くのか、自然科学の中からいくつかの段階を経て人文科学の分野に分け入り、それから再び、「私たちはどこへ行くのか」という、より難しい問いと、「それはなぜか」という最大の難問に立ち返る。(8ページ)
「現在の人間の有り様を把握するには、種の生物学的進化と、人間を先史時代に導いた環境とを合わせる必要がある。人間を理解するこの仕事は、人文科学だけに任せるにはあまりにも重要で、あまりにも厄介だ。」(13ページ)
「人間は本来善だが悪の力によって堕落するのか、それとも逆に、本質的には罪深いけれども善の力で救うことができるのか。(中略)、科学的な証拠によれば、私たちはその両方を併せ持っているらしい。」(23ページ)
神は存在するのか。宗教は必要なのか。著者は神の存在は否定するが、宗教の必要性は認めている。
いろいろと考えるヒントが満載だ。強いAIについて議論するときに役に立つフレームワークが提供されているように思った。オススメの一冊だ。
下記の同じ著者のものだ。合わせて読んでみたいと思った。