未来のいつか/hyoshiokの日記

hyoshiokの日々思うことをあれやこれや

記憶力を強くする、池谷裕二著、読了

記憶力を強くする―最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方 (ブルーバックス)を読んだ。

記憶術とか速読術とかかなり胡散臭いと感じているのだけど、ついつい読んでしまう。斜に構えて読んだのだけど、ごめんなさい。最近の脳科学の研究成果に基づいた入門書だった。予想といい意味で違った。おすすめである。

忘れないうちにメモっておく。68ページ

  1. 短期記憶 30秒から数分以内に消える記憶、7個ほどの小容量
  2. 長期記憶

ライミング記憶という耳慣れない言葉が出てくるが、ここでは無意識の記憶ないしは勘違いによる記憶としておく。(詳細は本書を読んでください)

エピソード記憶意味記憶は、「何を」を記憶しているのに対し、手続き記憶は「いかにやるか」を記憶している。後者は、俗に体で覚えるタイプの記憶である。

それぞれの記憶には脳の特定の部位が関係していて、例えば短期記憶は脳の海馬というのがそれを司る。海馬の機能が衰えてくると短期記憶ができなくなる。しかし、それ以外の機能は正常なので、昔の記憶は覚えているし、日々の生活には特段支障がない。

海馬を損傷した人を研究してみると、記憶をするのには支障があるが、思い出すことはできるということから、記憶は海馬には保存されていない。ということが研究によってわかってきた。76ページ

「記憶」という現象も細分化して観察すれば、単純な化学反応、ないしは巧妙な精密機械によって運営されている。121ページ

その精密機械がどう組織化されているのか。興味は尽きない。

そして本書の真髄が第6章「科学的に記憶力を鍛えよう」である。

6章までに、神経細胞シナプス神経伝達物質などの説明があって、ふむふむ、そーやって、脳は記憶しているんだな、考えているんだなというのが素人にもわかるように平易に解説されている。

そして6章で、脳の性質に沿った効率的な記憶方法について科学的な見地から検証している。186ページ

加齢とともに記憶力が衰えるという話はよく聞く。自分も実感として最近物忘れがひどいような気がする。そもそも人の顔と名前が一致しなくて失礼なことをしたことが多い。どうにかしたい。だからこのような本を読んでいるわけである。

本書は戒める。加齢とともに神経細胞は減っていくが、シナプスはむしろ増えている。つまり神経回路は年齢を重ねるに従って増えていくのである。この事実は、若い頃よりも歳をとった方が記憶の容量が大きくなるということを意味している。187ページ

うわー。そうなんだ。

物覚えが悪いというのは著者から言わせれば単に覚える努力をしていないというだけである。学生の頃は一つのことを覚えるのに大変な努力をしたはずである。それが強制的にやらされた勉強であろうとなかろうと覚えるために大変なコストをかけていたわけで、それを忘れて「ただただ老化を嘆くのはとても愚かな行為」だと言う。

しょえー。おっしゃるとおりである。たいして覚える努力もしていないのに、人の顔と名前が一致しなくてとか言い訳するな、そのとおりである。深く反省したい。(とほほ

「もの忘れがひどい」というグチをこぼす人もいるが、それもまた、忘れてしまって思い出せないのではなく、単に初めから覚えていないということではないでしょうか。187ページ

おっしゃるとおりである。そもそも覚えていないのだから思い出せるわけがない。

まあとはいうものの年齢によって記憶力が全く変わらないということでもないので、記憶には様々な種類があるのでそれに合った記憶方法がある。

例えば、かけ算の九九などは10歳になる前、意味記憶が発達している頃に暗記させることは理にかなっている。中学生になる頃はエピソード記憶が完成され、論理だった記憶力が発達してくる。188ページ

歳をとると、しばしばものごとに対する情熱が薄れてきます。一つのことに熱中できなくなります。感動も薄くなってきます。すると記憶力はてきめんに低下します。実は、歳をとって記憶力が落ちたように錯覚してしまう最大の原因はここにあるのです。感動できない大人になっているのです。191ページ
中略
刺激の多い環境で生活することはLTP(脳の記憶のこと)にとって都合が良いというだけではありません。歯状回の顆粒細胞も活発に増殖を始めるのです。つまり、記憶に必要な神経細胞が増加するのです。もちろん、その結果、記憶力は増強されます。そして、記憶力が増強されれば、またさらに多くのことに興味を持つことができます。より好ましい方へ脳が順応していくわけです。つまり、脳は使えば使うほどさらに使えるようになるのです。192ページ

やばい、普段から刺激と興奮を求めていないと脳機能が低下する。一度低下してしまった脳機能を元に戻すのには並大抵な努力では無理だ。「好奇心」と「探求力」が記憶にとって大切なビタミンということだ。

夢の効用についても解説している。

夢は記憶を強化するために必要だということである。新しいことを知識や技法を身につけるには、覚えたその日に6時間以上眠ることが欠かせないという研究結果がある。212ページ

テスト前夜の徹夜は意味がないということだ(ふむふむ)

失敗は恥ずかしいことではなく、恐れることでもない。大切なことは失敗して「後悔」することではなく、失敗して「反省」することだ。失敗を次に活かせることが、曖昧な記憶をする人間の脳の素晴らしいところである。214ページ

こうして考えると、物事の習得において、最も大切な心得は「努力の継続」であることがわかります。努力を続けて初めて報われるわけです。ですから、なかなか結果が現れないからといって、すぐに諦めてはいけないのです。もちろん、周囲の天才たちを見て躊躇することもいけません。彼らと自分の能力を単純に比べることは無意味です。なぜなら、努力と成果は比例関係にあるのではなく、累乗関数の関係にあるからです。自分は自分。今は差があっても、努力を続けていれば、いつか必ず天才たちの背中が見え、そして彼らを射程距離内に捕らえることができます。こうした成長パターンを示すのが脳の性質なのです。たとえ効果が目に見えなくとも、使えば使った分だけ着実に、能力の基礎が蓄積されていくのです。時に勉強が辛くなったら、この事実を思い出して自分を鼓舞してください。いつかきっと効果が表れるから、もっと頑張ろうと。

正座して読みたい一冊であった。人生100歳時代にどう生きるか。記憶力そして脳についての理解が深まればより良い人生を生きやすくなる。より幸せな人生を送れるのではないかと思った次第である。