未来のいつか/hyoshiokの日記

hyoshiokの日々思うことをあれやこれや

ノイマン・ゲーデル・チューリング、読了

ノイマン・ゲーデル・チューリング (筑摩選書)を読んだ。

ノイマン(1903/12/28-1957/02/08)、ゲーデル(1906/04/28-1978/01/14)、チューリング(1912/06/23-1954/06/07)の一般向け講演・著作の翻訳と解題・解説からなる。

ノイマンは数学だけではなく様々な分野で業績を残した巨人であるが、現在の広く利用されているプログラム内蔵式コンピュータの方式(「ノイマン型コンピュータ」と言われている)を考案したとされる。

ゲーデルは20世紀の数学基礎論にとって最も重要といわれている「不完全性定理」を1931年に発表した。

チューリングは数学者として第二次世界大戦時にドイツの暗号解読に功績を残したとされる。チューリングマシンとして知られる万能計算機に関する研究でコンピュータサイエンスの基礎を作った。

この20世紀を代表する3人の天才たちの業績を一般向け講演および著作で紹介したのが本書だ。

20世紀初頭の数学界はクロネッカー、ブラウワーらの直観主義ラッセル、ホワイトヘッドらの論理主義、ヒルベルトらによる形式主義というものがあったらしい。

ヒルベルト形式主義は、数学の無矛盾性を証明するために、公理と推論方法によって厳密に構成していく。これをヒルベルトプログラムというのだが、ゲーデルはその不完全性定理によって、ヒルベルトプログラムを作ることは不可能であると証明してしまう。

チューリングはものまねゲーム(チューリングテスト)という概念を平易に解説している。『計算機械と知性』(177ページ)

別室にいるAに質問を投げかけ、それが回答をしているものが機械であるか判定するというものである。チューリングは『もしデジタル計算機がものまねゲームにおいて満足な結果を生み出すことができないと判明したら(これは私の確信に反しているが)、機械は本論の「考える」という定義を満たすものではない』(182ページ)

チューリングは「思考はアルゴリズムに還元できる。人間は、チューリング・マシンである」(254ページ)という立場を取る。一方ゲーデルは「帰結3 人間精神は、いかなる有限機械をも上回る」(130ページ)、「帰結5 人間精神は、脳の機能に還元できない。(反機械論)」(131ページ)ということで、機械で人間精神は作れないとしている。

ノイマンゲーデルノイマンチューリングは直接的な交流はあったが、ゲーデルチューリングが会った形跡がない(14ページ)。

20世紀、コンピュータの理論的基礎を作った巨人の足跡を辿るのは面白い。翻訳、解題・解説は読みやすく、おすすめである。