未来のいつか/hyoshiokの日記

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パラノイヤだけが生き残る、読了

パラノイアだけが生き残る 時代の転換点をきみはどう見極め、乗り切るのかを読んだ。

インテルを80年代に急成長させた伝説の経営者アンドリュー・グローブの名著の復刊だ。

AmazonFacebookGoogleもなかった頃に書かれた本書を20代、30代の皆さんが、読みこなすのにはちょっとした基礎知識が必要だ。

世界最大の半導体メーカー・インテルは1980年代に経営危機を迎える。若い人にとっては信じられないことかもしれないが、当時、日本製64K DRAMのシェアは70%を超えていた。日本のメーカーは圧倒的な競争力を持っていた。インテルは「戦略転換点」を迎える。

半導体メモリの大手ユーザーは値段が安くて、不良率が低い、日本製半導体モリーを大量に購入していた。

当時、インテルなどは、日本の競争力はダンピングなど不公正な方法によっていると考えていた。そのため、抜本的な対策を打てぬまま経営危機に陥る。大手半導体ユーザのHPは日本製半導体メモリの不良率が米国製のそれよりもはるかに低いということを公表し、その論争に終止符を打った。

第5章にインテルの「戦略転換点」について生々しい記述がある。114ページに半導体の国際市場シェアの変遷がある。一夜にして日本製品に凌駕されたのではなく、それは10年近くの年月がかかってシェアが逆転したにもかかわらず、インテルは抜本的な対策を打てぬままにいた。

そしてグローブら経営陣は決断をする。創業以来の基幹製品メモリからの撤退である。

戦略転換点を通過するということは、あなたの企業が過去から未来へ根本的な変貌を遂げることだ(181ページ)
そして、「5年後には重役の半分は、ソフトウェアがわかる人間になっていなければならない」ということだ。つまり、幹部たちが経験や知識を積んできた専門分野を変えるか、彼ら自身が入れ替わる(取締役をクビになる)かということだ。

インテルはそれを行ったから生き残った。

本書(英語版)が出版されたのは1996年だ。インターネットがどのような影響を及ぼすかまだ十分明らかになっていなかった頃だ。グローブのレーダーにはAmazonは見えていなかったかもしれない。GoogleFacebookもない。スマホクラウドもIoTもビッグデータという概念も無かった時代だ。

第9章に「インターネットはノイズか、シグナルか」と記している。我々はインターネットが10xの戦略転換点であることを今だからこそ知っている。犯人を知ってミステリーを読むようなものだ。96年当時のグローブの分析から我々は何を学べるのだろうか。

真摯に変化から何かを学ぼうとしている姿勢が見える。今となっては的外れな議論もなくはないだろう。しかし、大きな変化を感じ、そこから何がしかを学ぶ姿勢、それこそが彼の経営者としての真骨頂だと思う。

第10章は、初版発行時にはなかった章だ。環境変化によるキャリア転換点についての章だ。「ライフシフト」でも議論されていたが、変化に適応する能力「変換資産」をどう保つか、その方法論がある。

生き残る戦略が第10章に記されている。

20年経っても価値は色褪せない名著だ。