世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」、山口周著、濫読日記風、その38
世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」 (光文社新書)を読んだ。
なぜ、世界のエリートは「美意識」を鍛えるのか?という問いはなかなか刺激的だ。
そもそも「エリート」という言葉に過剰反応する自分がいる。それはともかくとして、なぜ、世界のエリートは「美意識」を鍛えるのか?
それは『これまでのような「分析」「論理」「理性」に軸足を置いた経営、いわば「サイエンス重視の意思決定」では、今日のように複雑で不安定な世界においてビジネスの舵取りをすることはできない』(14ページ)からだという。
- 論理的・理性的な情報処理スキルの限界が露呈しつつある
- 世界中の市場が「自己実現的消費」へと向かいつつある
- システムの変化にルールの制定が追いつかない状況が発生している
方法論として分析的・論理的な情報処理スキルの限界がある。もちろんそのようなスキルは非常に重要だがアートとサイエンスのバランスが重要になってくる。
人の承認欲求や自己実現欲求を刺激するような感性や美意識が重要になる。
変化の早い世界においては、ルールの整備は後追いになるので、クオリティの高い意思決定には「美意識」が重要になる。
第5章で「受験エリートと美意識」を議論している。偏差値が高いエリート(受験エリート)がなぜオウム真理教的なもの好むのか。そこには美意識の欠如があるという。
ある組織に共有されているルールや規範が論理的に間違っている場合どうなるか。企業の不祥事はそのような文脈で語られる。ナチスドイツのアドルフ・アイヒマンの例を出して議論している。
「エルサレムのアイヒマン――悪の陳腐さについての報告」と「アイヒマン調書――ホロコーストを可能にした男」を読んだ、濫読日記風、その21 - 未来のいつか/hyoshiokの日記 でも読んだが、システムを無批判に受け入れることの問題点をハンナ・アーレントは指摘している。
美意識を持たないことの問題点を数々指摘しているわけだが、では、どのようにして美意識を鍛えるのか?それが第7章だ。
システムを無批判に受け入れることが悪ならば、結局のところその時代において支配的だった考え方について疑いを持つこと、批判的に考えることが重要になる。知的反逆を試みる。それは哲学を学ぶことに他ならない。それは「無批判にシステムを受け入れる」という「悪」に、人生を絡めたられることを防げるということだ(237ページ)
さて、「真・善・美」を考えるにあたって、最も有効なエクササイズになるのが「文学を読む」ことだ(239ページ)
『「偏差値は高いけど美意識は低い」という人に共通しているのが、「文学を読んでいない」という点であることは見過ごしてはいけない何かを示唆している』(240ページ)
文学を読んだり、詩に親しんだり、音楽を聴いたり、絵画を鑑賞したり、「真・善・美」を鍛えるエクササイズが必要だと思った。
自分はエリートだとは思わないけど、この歳になって圧倒的にそのようなリテラシーが欠如しているし、それに自覚的になって、もう少し文学などを読んでみたいと思っている今日この頃だ。
文学を読むのところで「罪と罰」の話が出てきて、あ、それ、最近読んだ(笑)と思った。それがちょっと嬉しかった。
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