未来のいつか/hyoshiokの日記

hyoshiokの日々思うことをあれやこれや

夢十夜、夏目漱石著、濫読日記風、その44

夢十夜 他二篇 (岩波文庫)を読んだ。

夢十夜は、夏目漱石の短編だ。ちょっとした夢をみたという話を十夜収めている。

その中では、第六夜が好きだ。

運慶(うんけい)が護国寺(ごこくじ)の山門で仁王(におう)を刻んでいると云う評判だから、散歩ながら行って見ると、自分より先にもう大勢集まって、しきりに下馬評(げばひょう)をやっていた。

運慶が仁王像を刻んでいるのを人々が見物している。鑿と槌でズンズン彫っている。

「よくああ無造作(むぞうさ)に鑿を使って、思うような眉(まみえ)や鼻ができるものだな」と自分はあんまり感心したから独言(ひとりごと)のように言った。するとさっきの若い男が、
「なに、あれは眉や鼻を鑿で作るんじゃない。あの通りの眉や鼻が木の中に埋(うま)っているのを、鑿(のみ)と槌(つち)の力で掘り出すまでだ。まるで土の中から石を掘り出すようなものだからけっして間違うはずはない」と云った。

名人には彫るべきものあらかじめ見えているという話なのだけど、この小品には絶妙なオチがあって、それが味わい深い。

永日小品という作品は明治時代の日々のちょっとしたことが書かれている。

火鉢が目に浮かぶ。明治時代の家屋は寒かったのだろうなあと思う。昭和の時代にも火鉢はあったが、さすがに最近は見ない。

どうでもいい話なのだが、焼麺麭と書いてトーストと読ませるらしい。


濫読日記風