自分の中に毒を持て、岡本太郎著、濫読日記風、その46
自分の中に毒を持て―あなたは“常識人間"を捨てられるか (青春文庫)を読んだ。
岡本太郎といえば「芸術は爆発だ」のおじさんだ。太陽の塔の作者でもある。そのくらいのことしか知らない。初めて彼の著作を読んだ。
岡本節がこれでもかこれでもかと炸裂する。芸術家として孤高の人でありながら商業的にも成功している。その語りを聞いている(読んでいる)だけでお腹いっぱいになる。
若き日の岡本太郎は1930年代のパリにいて、1940年ドイツ軍がパリを占領する直前にヨーロッパを去り、太平洋戦争突入直前に日本に帰ってきた(19ページ)
挑戦しろ。挑戦した上での不成功者と、挑戦を避けたままの不成功者とでは全く天地の隔たりがある。(26ページ)
インターネット時代、失敗が奨励されている。素早く失敗して素早くそこから学ぶ。芸術家岡本太郎は芸術家の直感として挑戦し失敗することの大切さを肌でわかっていたのだろう。
若き日の岡本太郎はパリのキャフェで20世紀初頭の芸術家たちと交流する。シュール系の画家や詩人、哲学者、芸術批評家、写真家などなど。十年以上のフランス生活のほとんどはキャフェとともにあった(46ページ)
ジョルジュ・バタイユとの出会いもキャフェがきっかけだった。
「よく、あなたは才能があるから、岡本太郎だからやれるので、凡人には難しいという人がいる。そんなことはウソだ。
やろうとしないから、やれないんだ。それだけのことだ。」(120ページ)
生きることそのものが芸術だという。
全身全霊が宇宙に向かって無条件にパーっと開くこと。それが「爆発」だ。人生は本来、瞬間瞬間、無償、無目的に爆発しつづけるべきだ。命の本当のあり方だ。(191ページ)
本書に岡本太郎の哲学、考え方、生き方の一面を見た。
コミュニケーションというのはそもそも本質的に無条件なものだ。無償、無目的であるべきものだ、と僕は考える。ところが今日では、すべて経済的メリット、それに材料を提供するというだけの面で処理されてしまう。そこに人間存在の孤立化を逆に拡大しているという感じが生まれてくるのだと思う。確かにその虚しさを、危険を、みんな漠然と感じている。だから情報とは何かという問いが一種の批判の変形として繰り返して発せられるのだ。(197ページ)
岡本太郎の危機感を今こそ理解したいと感じた。他の著作も読んでみたいと思った。
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