銃・病原菌・鉄、ジャレド・ダイアモンド著、読了、濫読日記風 2018、その12
銃・病原菌・鉄(上)、銃・病原菌・鉄(下)1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)を読んだ。
スゴ本の中の人が選んだ、1万円で“一生モノの教養”を身につけるための5冊 - マネ会で紹介されている一冊で面白さは間違いない。
本書をひとことで表すならば「歴史は、異なる人々によって異なる経路をたどったが、それは、人々の置かれた環境の差異によるものであって、人々の生物学的な差異によるものではない」(45ページ)
ヨーロッパでは文明が発達し、世界を制覇したが、それはヨーロッパ系の人々が生物学的に優れていたからではなく、たまたまその人々の置かれた環境によるものである。本書は一言でいえば、「人種による優劣という幻想」(32ページ)を打ち砕くものである。
例えば、3章で、スペイン人とインカ帝国の激突が描かれている。コロンブスがアメリカ大陸を発見して、ヨーロッパ人が新世界を植民地化した。その逆、すなわちインカ帝国の人たちがヨーロッパを植民地化することがなかったのは何故なのか?その問いに3章は答える。
ヨーロッパ人が新大陸を征服した結果、アメリカ先住民は激減した。
ヨーロッパ人とアメリカ先住民との関係におけるもっとも劇的な瞬間は、一五三二年十一月十六日にスペイン征服者ピサロとインカ皇帝アタワルパがペルー北方の高地カハマルカで出会ったときである。(122ページ)
スパインから来た168人のならず者集団が八万人の兵士に守られた皇帝を捉え、インカ帝国を征服できたのはなぜなのか。
3章はその経緯を詳しく記している。ピサロの随行者がインカ帝国を征服した経緯を記しているので我々はそれを知ることができる(彼らは文字を持っていた!)。
そして、読み書きのできたスペイン側は、人間の行動や歴史について膨大な知識を継承していた。それとは対照的に読み書きのできなかったアタワルパ側はスペイン人自体に関する知識を持ち合わせていなかったし、海外からの侵略者についての経験も持ち合わせていなかった。(146ページ)
スペイン人は赤子をひねるように簡単にインカ帝国の人々を騙して殺戮したのである。
本書のタイトル『銃・病原菌・鉄』は、ヨーロッパ人が他の大陸を征服できた直接の要因を凝縮して表現したものである。(147ページ)
ヨーロッパ人は、銃で人を殺し、病原菌(伝染病)で人を殺し、鉄で人を殺し征服して行く。
人類が農耕を始めた一万三千年前くらいから人類史を巨視的に俯瞰している。殺戮を可能としたシステムが生まれたのはなぜなのか、その疑問を膨大なエビデンスで紐解いて行く。知的パズルといってもいい。
その謎解きは本書をお読みいただくとして、食糧生産にまつわる謎の章で、家畜、銃鉄砲、概要線、政治機構、文字、疫病などがどのように発見、発明、発達して行くかの因果連鎖を解説している(図4−1、153ページ)
ユーラシア大陸がたまたま横に広がっていたから、縦に長いアメリカ大陸、アフリカ大陸に住む人々よりも圧倒的に有利な位置にいたというのがネタバレである。
大変面白かった。おすすめです。
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