EVと自動運転、鶴原吉郎著、読了、濫読日記風 2018、その19
年末に向けて、読了して日記に感想を書いていなかった本をひたすら記すことにする。(日記の日付はテキトーなので忘備録として自分用にとっておく)
EVと自動運転――クルマをどう変えるか (岩波新書)を読んだ。
日本にとって自動車産業は残された希望の輸出産業になっている。かつては家電が世界を制覇していたのだけど、いつの間にかに壊滅的な状況になって、日本の製造業は自動車産業によってかろうじて生き残っているような形だ。(クルマが外貨稼ぎの中心に34ページ)
その自動車産業も100年に一度ともゆうべき変化に直面している。EVと自動運転だ。そして自動車産業には大きな弱点がある。
それは、「品質のいい車を競争力のある価格で販売する」という自動車のビジネスモデルが、自動車産業の誕生以来100年以上変わっていないということだ。自動車メーカーはこれまでビジネスモデルの転換を一度も体験したことがなく、その組織は既存のビジネス向けに最適かされているため、新しいビジネスを生み出すことにはあまりにも硬直化している。38ページ
なるほど。日本の製造業の強み、それに徹底的にチューニングされたビジネスモデル、組織構造は、新しいパラダイム、情報化と言ってもいいし、産業のソフトウェア化と言ってもいいし、あるいは流行りの言葉で言えばデジタルトランスフォーメーションに対応できていない。
ソフトウェア産業ではAppleはPCのベンダーからいつの間にかにクラウドやスマホのベンダーにピボットしている。ソフトウェア産業のジャイアントのMicrosoftもライセンスビジネスからモバイルファースト、クラウドビジネスへピボット(転身)している。
ソフトウェア産業では10年に一度くらいのパラダイムの転換があり、そのたびに勝者が変わっている。かつてはIBMであり、PC時代にはMicrosoftとIntelであり、インターネット時代にはGAFAと呼ばれるGoogle/Apple/Facebook/Amazonらにピボットした。
フィルムの時代の王者コダックはデジタル時代の今存在しない。富士フイルムは生き残った。
変化が早すぎる時代には栄枯盛衰が早い。
イノベーションのジレンマで知られるある分野でのトップ企業がはるかに規模が小さい新興企業に破壊される状況である。IT業界では、広く知られていて、滅ぼされる側の企業で働いていた人も多いので(自分もそうだ。DECという滅ぼされる側にいた)、実感としてその怖さを経験・理解している。
自動運転によって何ができるかを書かれた書籍は多い。本書はそれだけではなくその技術がどのように産業の変化を促しているかを記している。自分にとっての本書の気づきは、自動車産業が初めてのビジネスモデルの転換を必要としているということだ。
トヨタは生き残るのだろうか。そんな感想を持った。
濫読日記風 2018
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