未来のいつか/hyoshiokの日記

hyoshiokの日々思うことをあれやこれや

コンヴィヴィアリティのための道具 (ちくま学芸文庫)、イヴァン・イリイチ著、Ivan Illich(原著)、渡辺京二&渡辺梨佐訳、読了、濫読日記風 2018、その46

コンヴィヴィアリティのための道具 (ちくま学芸文庫)を読んだ。

知人から読書会のお誘いを受けて読み始めたのだが、非常に面白かった。

イリイチ(1926 - 2002)はウィーン生まれの思想家、学校・病院制度に代表される産業社会への批判で知られる。教育、医療、エコロジー運動、コンピュータ技術など、多分野に影響を与えた。

二つの分水領。

第一の分水領。現代の医療の進歩によって人々の生活に改善をもたらした。水の浄化、幼児死亡率の低下、ネズミの駆除によるペストの無力化、梅毒の予防、糖尿病への対応などなど。

この分水領を超えることによって、医原病が発生するようになった。それが第二の分水領。

専門家によって定義された病気が発生することになる。

同様なことは他の産業主義的諸制度でも見られる。(32ページ)

イリイチは自立共生的(コンヴィヴィアル)な再構築を提案する。コンヴィヴィアリティ(自立共生)という言葉を産業主義的な生産性の正反対を明示するものとして使う。(39ページ)

彼のイメージしている産業主義的なものには教育、医療などの制度や、道路などのインフラストラクチャー、自動車のようなテクノロジーなどなど広範囲なものが含まれる。

ざっと一読したのだけど、なかなか訳文がすっと入ってこない。読書会のメンバーで音読しながら段落ごとに議論をして理解を深めている。ゆっくり読みながら理解するという方法は読書会ならではだと思った。

読書会での精読で半分ぐらいまで行ったが、自分はざざっと目を通して、今後ゆっくりと議論をしながら自分の理解を確認したいと思った。

1973年の著作なので、その後の技術の進化(特にIT技術に代表されるもの)やGAFAのような地球規模の多国籍企業の支配などの文脈で再評価してみると面白い。環境問題の理解も1973年の時点とは随分違ったものになってきている。


濫読日記風 2018