今求められるオープンソース人材像
LPI Japanという組織がある。そこで懇親会兼ワークショップみたいなものがあり参加の機会を得た。LPIというのはLinuxの資格認証試験をする団体で業界では知る人ぞ知る団体である。NPOでもある。
そこでいろいろ議論をさせていただいた。LPI事務局から与えられたお題は「今求められるオープンソース人材像」である。あ、そこのあなた、引かないでください。
やはり高い技術力をもっていなければ話にならない。プロフェッショナルであることは最低必要条件である。技術に対するコミットメント、ロイヤリティ、真面目さが必要だ。広い視野で物事を考えるためにコスモポリタンであること。やはり地球規模での最適化を考えられないとね。何事にも挑戦する心を持って欲しい。
オープンソース開発者は当然ソースコードを解読できるしコアダンプのイロハも知っている。ダンプを読めない人は読めるように訓練を積もう。
オープンソースソフトウェアは多人数で開発する事が常なのでコミュニケーション能力も必須だ。仙人で人と没交渉で大規模ソフトウェアは開発できない。
そしてコミュニティで影響力を持ちたければ、そこでの存在感というのが必要になる。存在感って何だ?コミュニティメンバーからのrespectである。尊敬をどれだけ受けられるかという、人間力である。
そのような人材を教育機関が供給できるのか?できないのか?どのように供給するか?それが問題である。
LPIはLPICという資格認定制度を持っている。これはLinuxに関する知識の過多を問う試験である。知識の有無をとうわけなので、それが実務にやくにたつスキルかどうかはまた別の話である。
専門学校やコンピュータ研修に携わる企業にとって例えばLPIC受験対策講座というようなカリキュラムを提供するのはある意味たやすい。問題は上記のような例えばコアダンプ解析できるような高度(?)な技術者をどう育成するかという話である。
現状ではそのような人材を育成するカリキュラムは皆無といっていい。残念ながら専門学校にしろ大学にしろ研修ビジネスを提供している企業にしろLPIC試験対策講座は提供できても、ソースコード解析レベルの技術者養成講座を提供する事はできていない。そのようなスキルは、クラスルームの座学によって身につくものではなくOJTなど実際の仕事によって身につけるものである。そのようなスキルが今求められている。
上記のようなドメインの教育は、教育産業(専門学校、大学等)と産業界とのコラボレーションによってなされると思う。
わたしは教育と言うのは基本的には広い意味での「コミュニティ」によって提供されるべきと考えていて、いわゆる社会的共通資本だ、営利事業には必ずしもそぐはないとは思っているのだが、必要最低限レベル以上の高度な教育に関しては企業の積極的な関与があってもいいと考える。むしろ積極的な関与が無ければ高度な教育というのはなされ得ないと考える。
使えない資格をいくら取っても取らせてもしょうがなくて、使えるスキルをどう教育、トレーニングできるかという話である。
教育を受けると言うのは純粋に知的好奇心を満たすという点だけではなくて、その教育を受けることによって、収入が増えるということを期待するという直接的な動機もある。
XXXの知識を得てスキルアップで転職し給与をXX%増やす〜なんていう生々しい話である。
そーゆー文脈で整理すると、産業界は、今すぐ必要としている人材像を明示的に宣言し、教育機関にその仕様を示す。XXXというスキルを持ち、XXXということができる、XXXという人材。そのような仕様の人材はXXX万円で雇用する。なんていう事である。
余談になるが、現状は産業界は大学に対して必要な人材の仕様を明示していないし期待も一切していない。プログラムができようができまいが、新卒として採用し社内研修で基本的な知識を与える。企業は教育機関なのだろうか?
一方で企業が明示的に必要な人材の仕様を明らかにすれば、教育機関はその仕様の人材を供給するというインセンティブを持つ事になる。つまりXXXなことができる人材だとXXX万円の収入が期待できるので、そーゆー人材を育てようというシナリオである。学生はそのスキルと収入を評価する。
極論になるが教育というのは教育への投資と自分の障害賃金との投資対効果の話になる。
投資対効果の大きい教育コンテンツを提供できた教育機関が結果として競争力を持つ事になるのである。
(12月17日訂正:上記障害賃金は生涯賃金の間違い。御指摘ありがとうございます>fjの教祖様)