未来のいつか/hyoshiokの日記

hyoshiokの日々思うことをあれやこれや

開発者はどこにいるのか?

FLOSS-JP オープンソース / フリーソフトウェア開発者 オンライン調査日本版 (http://oss.mri.co.jp/floss-jp/)というのが2003年ごろに行われている。既に2年以上たっているわけだが日本におけるオープンソースフリーソフトウェア開発者の実情(?)を知る上での基礎的な資料なので引いてみた。わたしのイメージするOSS開発者と調査した三菱総研の比屋根さんや飯尾さんのイメージするOSS開発者とは微妙に異なる可能性はあるが、日本のOSS開発者の実態を調査した唯一(?)のサーベイなので非常に貴重である。
アンケートは合計547人回答を得ている。開発時間をみてみよう。http://oss.mri.co.jp/floss-jp/report.html#Q6
図(Q6) 週平均OSS/FS開発時間
5時間以下が61.7%と大半をしめる。0時間も8.5%である。むむむ?開発時間が0時間の人は普通開発者とは呼ばないぞ?週5時間以下というのも、OSSを利用していてちょっとしたツールを開発するとか機能を拡張するとかいうイメージであり、がしがし開発しているという感じとはほど遠い。先日のMozilla Japanでの議論でもFirefoxそのものの開発は中野さんとあと一人二人で、もじら組をはじめとするコミュニティの人たちはヘビーユーザ、エバンジェリスト等々という感じであった。OpenOffice.orgの中田さんのお話でも日本での開発者の実数はその程度であった。Samba-jpも似たような感じ。
一方20時間以上の人は12.1%いるので、この人たちはなんらかの形でフルタイムに近い活動を行っていることになる。(それとも睡眠時間を削ってハックしているのか?)
SIベンダーに勤めていて、PerlMySQLを利用しているユーザがバグに遭遇し自前でそれを直すという層はどのくらいいるのだろうか?そのような人たちはWebサービス会社(楽天とかライブドアとか)あたりには、そこそこいそうだが自らのことをOSS開発者として位置づけているか?
余談であるが、先日、飯尾さんとお話する機会があったのだが、日本でOSS開発者は何人くらいか?というわたしの問いに5000人規模だという回答であった。わたしは、それはいくらなんでも多すぎるでしょう、せいぜい数十人じゃないのかなあ、ということで論争になり、グッディの前田社長も交えて結論のでない議論になった。前田さん、わたしは数十人から多くても3桁前半、飯尾さん、比屋根さんは数千人という認識であった。
himainuさん、d:id:himainu:20060306#1141664444

日本のSELinuxでもそうです。

という情報もいただく。
解決策はすぐには思いつかないが、最初のステップとして問題を正しく理解する必要があり、その認識がづれていると方向が定まらない。
OSSの優れているところは、ライセンス問題というよりも、バザールモデルが起きたときに、多数のカジュアルな開発者がちょっとした自分の問題をパッチという形で実装しコミュニティに還元するというメカニズムである。パッチを作成できるというのはまさにライセンスの優れたところなのではあるが、バザールが発生しない限り、OSSの本当の強みは発揮できない。これをエコシステムといったりするが健全なエコシステムをもつOSSは自立的な持続可能性を持つ。
繰り返すがエコシステムには多数の開発者、すなわちコア開発者とおびただしい数のカジュアルな開発者が必要なのである。おびただしい数の開発者が試行錯誤を繰り返すといういわばソフトウェア開発におけるロングテール現象が発生したとき、そのOSSの開発モデルは従来型のソフトウェア開発によって生み出されるソフトウェア製品を凌駕する可能性を秘めるのである。
議論のベースになるFLOSS-JPを行ってくれた比屋根さん、飯尾さん達には深く感謝する次第である。