未来のいつか/hyoshiokの日記

hyoshiokの日々思うことをあれやこれや

企業とOSS

例えばIPAで支援してもらってOSSを開発するとする。結果をOSSライセンスで公開するのは契約の縛りがあるから当然なのであるが、「OSSで開発しました、コード公開しました、以上」ではバザールモデルにならない。開発企業以外がそのソースをみてパッチを作ったり活発に議論したりということは通常ならない。今年度の予算消化しました。物は契約どおり作りました。次年度以降保守されません。ではあまりにももったいない。
では、どうすればいいのか?
開発の主体が企業であろうが個人であろうがコミュニティを形成し多くの人および企業に参加してもらう。すなわちバザールを興すというのが成功の鍵だと思う。このコミュニティを形成するというのはコードを書くよりはるかに難しい。パッチを作るよりはるかに難しい。そして、コミュニティをどのように形成するかという知恵というものは各自の成功体験の中にしか存在していない。明文化されてはいない。少なくともわたしは寡聞にしてそのような明文化されたものを見たことがない。
上手なコミュニティの作り方とか参加の仕方というのはあると思うが意識して実践されているかどうか微妙なところだ。少なくともわたしの見る限り特に大手企業では組織だってできているとはおせいじにも言いがたい。たまたま大企業に所属していた誰それさんのパーソナリティに依存してコミュニティに参加しているというのはあるとしても、コミュニティとのアライアンスを上手にやっているというのは寡聞にしてしらないというのが実情じゃないかなあと思う。
OSSの面白いところは経験と参加だと思う。バザールに参加していろいろ面白い経験を積む。そのプロセスが重要である。ソースコードの公開というのはその必要最低限の条件で、ソースコードを公開するだけでは、誰もバザールには参加してくれない。なじみの客を獲得するにはそれなりの魅力と営業努力が必要なのである。お祭り騒ぎにするためには、参加したら楽しかったという経験を与えないといけない。成功したバザール型OSSには間違いなくそのような経験が蓄積されている。
BLOGに似ている。多くの読者を獲得するには、1)BLOGが公開されている。2)頻繁に更新する。3)すぐに更新する。4)内容が面白い。などなど。OSSもそのソフトウェア自身に魅力がなければ誰も使ってくれないのではあるが、それ以上に多くのユーザを獲得するためには、頻繁にそして素早くリリースすることが必要だ。バグフィックスは迅速で質問にはきびきびと答えてくれるようなOSSは自然とユーザが増えてくる。そしてユーザベースが増えるとその中に何人かはバグの指摘だけではなくパッチを送ってくれるようになり、その数が増えてある閾値を越えると開発者コミュニティが自然と形成される。そうすると自立的にコミュニティが持続可能な形で継続的に機能を追加しはじめる。正のフィードバックが回り始めるのである。
そのようなフェーズまで行き着いた成熟したOSSコミュニティはおそらくそれほどは多くはないのである。しかし定番のOSSコミュニティというのは多かれ少なかれそのような成長のプロセスを通過してきた。
企業がそのプロセスを十分理解してよきコミュニティの一員になるためにはもう少し時間がかかるかもしれないがわたしはそれは不可能ではないと思っている。
企業のOSS担当者へのいくつかのTips。

  • 新規にOSSをスクラッチから作らない。似たようなOSSはどっかにあるだろうからそれと協調する路線を考える。OSSを作るのは難しくないが、OSSコミュニティを作るのは非常に難しい
  • ポータルサイトを作る。メーリングリスト、自由に参加できるWikiのようなもの、最新版のコードを公開するサーバ、バグデータベース、ドキュメントなどなど
  • 議論は公開したメーリングリストで行い、誰でも参加できるフェースツーフェースのミーティングも適宜開催する。
  • いろいろなところで宣伝活動をする。

もちろんコミュニティが持続的に発展するには参加者の情熱や愛は重要である。