未来のいつか/hyoshiokの日記

hyoshiokの日々思うことをあれやこれや

LinuxCon Japan 2010、第106回カーネル読書会、U-20プログラミングコンテスト、PHP祭りなど

先週は、LinuxCon Japan 2010から始まって、第106回カーネル読書会、U-20プログラミングコンテストの最終審査会、そしてPHP祭り(PHPmatsuri)へ参加とコミュニティ三昧の一週間だった。

英語三昧

コミュニティ三昧ではあったが、英語三昧でもあった。

LinuxCon Japanは日本で開催されるカンファレンスであるが、公用語が英語になっていて、日本人の発表も英語、当然質疑応答も、日本人同士でも英語である。キーノート以外には通訳はつかない。

昨年のLinux Symposium Japan以来の英語でのカンファレンスで、当初は英語の発表で大丈夫かという声もあったが、やってみたら、意外とどーにかなったというのが実状である。日本人にとっては、英語での発表は相当敷居が高いが、Linuxの世界では、避けて通れないのでしょうがない。

海外からカーネルハッカーが来るので、彼らとコミュニケーションをとるためには、英語以外の選択肢はない。

若い人がちらほら参加していて、わたしの希望としては、もっともっと学生の参加が増えればいいなあと思っている。

LinuxConの中日(なかび)に開催したカーネル読書会カーネルハッカーが多数参加してくれて、昨年の第100回記念の時のように盛り上がった。来年もLinuxConが開催されるのならば、同じように行いたい。会場はGREEに、ビールおつまみはNovellに提供いただいた。GREEのふじもとさんには、会場での細かいことに大変お世話になった。ありがとうございました。

カーネル読書会での前説は昨年同様英語である。参加している学生さんたちには、積極的に海外からのカーネルハッカー達と交流するように背中をおした。英語で自己紹介するんだよー。なんでもいいから一言挨拶するんだよー。

LinuxConの最終日の懇親会で、参加していた学生に、ハッカーと話をしたかと聞いたら、まだだと言うから、Greg KHにところに連れて行って、自己紹介をさせ、カーネルハッカーになるにはどうしたらいいかアドバイスを聞いた。ドキュメントを翻訳するとか、ドキュメントを書くとか、バグを直すとか、メンテナーになるとか、いろいろなアドバイスを彼にしてもらった。英語力の必要性を多分痛感したと思う。そーゆー刺激が何かになればと思う。おせっかいではあるが。

Gregと言えば、LinuxConで、安定版2.6.35.7をリリースするのをライブデモした。リリース名はYokohamaである。前日YLUG(Yokohama Linux Users Group)のカーネル読書会に出たので、それにちなんでYokomahaと名付けた。というか、発表の前にGregがYLUGのマスコット名は何だと聞いてきたので、特にないというと、安定版リリースの名前にYLUGにちなんだ名前をつけるというので、苦し紛れにYokohamaというのは、どーだと答えたところ、Yokohamaになってしまった(笑)。ライブで、デモをしているとき、Yokohamaのスペルはあっているかとかぶつぶつ言いながら安定版をリリースしていた。

LinuxConの前日、ボランティアの皆様とJames Bottomleyを連れてハイキングに行った。英語の練習をしたいからといって、娘もついてきた。北鎌倉から円覚寺、源氏山、長谷の大仏、長谷寺などをまわった。参加した日本人のなかで、娘の英語が一番上手だったのであるが、おとーさんもがんばらなければいけないと思った。

会社の9月のお誕生日会で、若手のエンジニアを話す機会があって、hyoshiokさんは、どーやって英語を覚えたんですかというような話になって、昨年のお誕生日会でも同じ話を同じエンジニアにしたことを思いだし、なんでもいいから使えばいいんだ、というようないい加減な答えを昨年同様にした。

例えば、質問を英語でする。"I have a question. ..."だ。例えば自己紹介をする。"My name is Hiro Yoshioka. ..."だ。難しいことでもなんでもない。使わないで、英語が上達するわけがないのに、なんで、難しいことを考えるのだろう。英語を使う。話はそれからだ。

U-20プログラミングコンテストは毎回作品を楽しみにしている。作りたいからつくちゃった。というような作品には力があるなあと思った。

PHPmatsuri

そして、PHPmatsuri(http://2010.phpmatsuri.net/)である。

主催者の安藤さんに発表を依頼されて、前日まで話す内容が全然固まっていなかった。ハッカソンについての何かということは大枠で決まっていたのだけど、伝えたいことが今ひとつ絞りきれていなかった。一つのエピソードとして、セキュリティ&プログラミングキャンプについて語ろうということはおぼろげのイメージとしてあったのだけど、詳細までは決めきれていなかった。

海外からPHPハッカーが来るので、彼らにも向けて何かを発信したかった。

もう一つのチャレンジとして、英語での発表というのも考えていたが、コミュニティ、しかもPHPというアウェイの場での英語の発表というのは正直どうしようと迷いに迷っていた。

仕事では、ふつー(?)に英語を使っているけど、多くの人の前で、仕事以外の場で発表するというのは経験がない。*1

PHPmatsuri開催前日、今回来日した人たちとスタッフの皆さんと食事をとる機会があって、Joel PerrasやNate Abeleにプログラミングキャンプのお話をしたら、意外と面白がってくれたので、キャンプの話題についてはふれることにした。この時点では英語で発表するかどうかは決めかねていた。

結局、キャンプとかハッカソンとかの意義とか楽しみ方を中心に、話をまとめることにした。

英語でするかどうかは、最後の最後まで迷ったのであるが、英語でやると日本人参加者には全然伝わらない可能性があるので、日本語と英語でやることにした。どのくらいの粒度で日英を使い分けるか、コンテクストスイッチをするかということに関しては、スライドごとにすることにした。ワンセンテンス毎だと自分の頭の切り替えが追いつかないので、ある程度の塊として、スライド1枚を英語ないしは日本語で喋って、頭を切り替えて、そのスライドを日本語ないしは英語でまた説明することにした。

英語で発表する意図は、海外からのゲストに向けてという表面上のものもあるが、もう一つは、日本のエンジニアに向けて、英語を使えるようになると世界が広がるよ〜ということを体で表現したかったからである。

何度も何度も識者は英語の重要性を言うわけだけど、自分の問題としてとらえていないいるエンジニアが日本では多くはない。*2 マニュアルは英語で書かれているので、英語に苦手意識あるよりはないほうが絶対有利だ。ツールの開発者が外国の人で日本語が話せなかったら、コミュニケーションをとるには英語でとるしかない。そして、じかに開発者本人に聞ければ、それはどう考えても圧倒的に有利だ。

むしろ、日本語に翻訳されているのを待っていたら英語を使う人に比べてとんでもなく不利になってしまうし、そのような余裕は我々にはないはずだ。
にも関わらず、そこそこ日本語の情報は氾濫しているので、ふつーにのほほんとしていれば、日本語の世界だけでも、どうにか生きていけるように勘違いできてしまうので、あんまり英語ができなくてということのハンディキャップについて思いを馳せる機会は少ない。

ところが、PHPmatsuriのようにCakePHPというツールを作った人が、自分の目の前にいてハックをしているという状況で、昔から疑問に思っていたあれやこれやを聞きたいのに、英語が出てこなくてもどかしい経験をすると、あああー、自分も、もっともっと英語ができるようになりたいなあ〜みたいな事は思うし、思うのが自然だ。そのような場所にいても、エンジニアには論理的な思考が必要で英語なんて二の次であるなんてことを言う奴は多分いない。いたとしたらよっぽど頭がおかしい。

英語で発表する

でもって、わたしのお話である。

*3

英語で発表するというのは、正直きつかった。日本人向けに英語で発表するのなんて、おめーばかなんじゃないの、とdisられる可能性もある。コミュニケーションというのは伝わってなんぼなんだから、英語にして伝わらなかったら何の意味もないではないか。ここは日本だ。日本で日本人が多い場で英語で発表するなんて愚の骨頂である、というような反発もあるのではないかと思っていた。無言の同調圧力みたいなものを感じていたのである。

だけど、当日腹をくくった。とりあえずやってみる。ダメだったら次回やらなきゃいいだけの話である。根は楽観主義者である。

海外から来ていた人たちには、わたしがかかわっているクレージーなエピソード(セキュリティ&プログラミングキャンプとかカーネル読書会とかのことね)をいくつかご紹介した。これは、英語でやったので、どうにか伝わったかと思う。

日本のみなさんには、細かいところではなく、わたしが「英語で発表したという事実」をメッセージとした。

コミュニケーションをとることの重要性。ハッカソンやキャンプ、あるいは勉強会などでも一緒のことなのであるが、知らない人とネットワークをとる重要性。海外からのお客さんが来ているのならもじもじしないで、とりあえず、自己紹介くらいはしようよ、というようなメッセージである。

プログラマーには武器がある。プログラムを書けるという武器がある。コードが自己紹介になる。英語がたどたどしくても伝えるものがあるのならそれを伝える方がどれだけ楽しいか。面白いか。豊かな人生が待っているか。

勉強会で、知識を得るだけというのはもったいない。達人を見つける。達人と知り合いになる。

達人と弟子というパターンがある。優れたプログラマになるために、目標とする達人を見つけるという方法論だ。徒弟制度みたいなものであるが、小さい会社だと必ずしも師匠となる人が見つからない場合もある。そこでコミュニティだ。コミュニティに参加して、その道の達人と出会う。

達人を見つけて、学ぶ方法を学ぶ(learn how to learn)

というようなことを、日本語英語であれやこれやお話をした。

英語でお話したので、海外から来た人たちがコメントをしてくれた。Joel Perrasは自分は自分が成長するために、uncomfortableなチャレンジをする、comfortableなことばっかりやっていたら成長しない、というようなことをコメントしてくれた。確かにそのとおりだと思った。実際自分にとって、英語で発表するというのは間違いなくuncomfortableなことだったけど、それにチャレンジしたおかげで少しは前進したような気がする。それを気がつかせてくれたコメントであった。

最後に33人連続LT(lightning talks)というとんでもないことをやっていたのだけど、今回さっそくプレゼン資料を英語化してくれた人たちがいた。うれしかった。

エンジニアたちが英語で情報発信を少しずつはじめれば、その練習を今日からはじめれば、自分の地平線は確実に広がると思う。そんな予感がした。そーゆー人たちがどんどん増えれば素敵な世界ができると思う。別にアメリカにいけとかそーゆー話ではない。

英語を使うのは、英語を使ったら、楽しいし面白いしワクワクするからである。

難しく考えることはない。

RubyKaigiもYAPCもコミュニティが英語で発信をはじめている。PHPmatsuriの公用語は英語ではないけれど、ひとつのきっかけとして、プログラマにとって実践的な英語論ということになればと思った。

今回、PHPmatsuriに参加できて本当によかった。声をかけてくれた、安藤さんには大変感謝をしたい。そして、手作りの運営をしていたスタッフの皆さん、素晴らしいハッカソンだった。日本のコミュニティって、すごいよね、愛があるよね、と思った。

そしてそしてハッカソンに参加したすべての皆さんありがとうございました。

また、いつかどこかでお会いしましょう。

*1:知り合いとの飲み会の話題は、会社で英語使っていますか、と聞かれるのが最近の定番で、いやはや大変っすよ、とか、全然使っていないですよとか、その場のノリでいーかげんに答えている。

*2:10月4日の注釈:当初『自分の問題としてとらえていないエンジニアが日本では多くはない』という表現でしたがそれでは、自分の問題としてとらえているエンジニアが多いことになってしまうので、言いたいことと正反対になってしまう。悪文の見本ですね。訂正します。

*3:10月4日追記:なぜかslideshareを埋め込めなかったのであるが、&username=hyoshiokを削除したところ表示できた。