未来のいつか/hyoshiokの日記

hyoshiokの日々思うことをあれやこれや

不格好経営 チームDeNAの挑戦 南場智子。読了。


不格好経営―チームDeNAの挑戦を読んだ。

1999年秋、当時のオフィスにて(17ページ)

彼女のキャリアはよく知られている。マッキンゼーでキャリアを積みパートナーになるが、インターネットベンチャーDeNAを創業し社長になる。そして夫の看病のため社長を退任し現在にいたる。そして本書は、彼女のビジネスに対する考え、DeNAの原点を余すことなく記している。

コンサルタントとして順風満帆だった著書がなぜか起業し、それまでのキャリアが張り子の虎だったことを学ぶ。とんでもない失敗を繰り返し、その度に学んでいく。失敗を成長の糧にしていく過程がこれでもかこれでもかと記されている。

インターネットのオークションサイトを作るというのが創業時のビジネスモデルだ。そして、詳細な仕様書を作りサイト構築を外注する。さすがコンサルあがり、やることにそつがない。システム開発を発注する。そして、「開発が完了したはずのその日に、実際はコードが1行も書かれていないことが発覚したのだった。」

コードが1行もない、つまり開発の成果物ゼロ。つまりシステムがない?…

すごい、自分ならそんな現場にいたくない、超絶なデスマーチの始まりである。丸投げ、コミュニケーションがゼロ、そして何もないことが最後の日に発覚する。

旦那が南場にアドバイスをする

  1. 諦めるな。その予算規模なら天才が3人いたら1ヶ月でできる。
  2. 関係者、特にこれから出資しようとしている人たちにありのままの事実を速やかに伝えること。決して過小に伝えるな。
  3. 「システム詐欺」という言葉をやめろ。社長が最大の責任者、加害者だ。なのにあたかも被害者のような言い方をしていたら誰もついてこないぞ。

この強烈な経験がシステムなんかどっかに外注すればいいよというコンサルタントの作法を徹底的に破壊する。この経験がトラウマになって学んでいく。

そしてどうにか黒字化にこぎつける。時代は携帯のパケット定額制が定着し始める。

そこに登場したのがモバオクだ。ビッダーズとは切り離して開発した。その開発者が川崎(のちに取締役CTO)だ。ひとりで、3ヶ月ほどで感動的に使い易いシステムを開発する。これまでの開発アプローチ、要求定義、設計、コーディング、テストというステップが再度大きく見直された。つくり手(プログラマー)を企画段階から巻き込み、つくり手自身がユーザーにとっての面白さや使いやすさを考えながらプログラミングしていく方式を取り入れていく。

これはある意味、SI的ソフトウェア開発からの決別であり、ウェブサービス開発の王道であるハッカー的ソフトウェア開発を自らの組織で学んだ瞬間だ。経営者が unlearning した瞬間と言ってもいい。

著者は自信の出身である、コンサルタント業界の人々に次のようなアドバイスをする。1)何でも3点にまとめようと頑張らない。物事が3つにまとまる必然性はない、2)重要情報はアタッシュケースではなくアタマに突っ込む、3)自明なことを図にしない、4)人の評価を語りながら酒を飲まない、5)ミーティングに遅刻しない。

ぐははは。コンサルタントをおちょくっている。おちょくっているが人材流動性があり優秀なのでコンサル業界から積極的に雇用しているのも事実である。そして人材採用に関しては社長自ら最も重要な課題として取り組んでいる。

これまでの軌跡を振返りながら特に自らの失敗を面白おかしく誠実に記しているところが素敵だ。もちろん語られていない物語も沢山あるだろう。それを差し置いても失敗を真摯に書き記すことは出来るものではない。

インターネット業界にいるものとして、一度お目にかかってみたい、そのように感じた一冊である。