社会人学生のための大学
産業技術大学院大学で昨年開設したenPiTという教育プログラムの紹介記事が出た。わたしも永瀬さんと一緒に写真で登場。
http://wired.jp/2014/03/20/enpit/
日本においては、社会人が大学を卒業した後、再び学校に戻って教育を受けるということはあまり一般的ではない。社会人学生の国際比較によれば、日本における社会人学生はOECD諸国に比べ著しく低い。(社会人大学生の国際比較 id:hyoshiok:20140317:p1)
産業技術大学院大学がユニークなところはその学生の多くが社会人学生だということである。
日本において、社会人学生が増えないのは、受け入れ側の大学の問題もあれば、社会人学生を支援するべき社会の制度的な問題もある。
後者でいうと、日本の多くの企業は、最終学歴を重視はするが、(どこどこ大学出身とか)、最新学習履歴(いま何を学んでいて、どのようなスキルがあるのかないのか)については、それほど重視していないように見受けられる。
自分の時間的コストを払って大学に通ったところで、会社でそのことがまったく評価されないとしたら、多くの人は、そのような時間的な投資を躊躇することだろう。
医師や弁護士になるために、医学部を卒業しないといけないとか、法科大学を卒業しないといけないというようなことがなければ、ちょっと大学に戻って、勉強し直すかということを手軽に行うような制度的な環境もない。
一方で、IT系の勉強会の隆盛に象徴されるように、何かを学びたいという人は一定以上いる。別にお金のためとか、誰かに評価されるために行うというよりも、自らの知的好奇心、あるいは、技術者としての危機感から、自発的に学ぶ人たちである。
そのような人たちは、自分の時間を使って、夕方や休日に開催されている勉強会のようなイベントを発見し、参加する。
彼らのニーズと大学が提供している教育(サービス)は必ずしもマッチしていない。
多くの大学は、社会人を受け入れる。科目等履修生という制度で講義を受講することはできる。モグリで受講しなくても、正々堂々と履修できる制度である。
しかしながら、社会人のニーズ大きい、夜間や土曜日の時間帯に授業を提供している大学は少ない。
産業技術大学院大学は、平日の授業は18時30分開始だし、土曜日も開講している。仕事帰りでも授業がとれる。
社会人学生を増やすことは活力ある社会を作るためには必要だと思う。その意味で、最低限でも、夜間や休日にサービスを提供する大学が増えてくるとうれしい。
社会人にとって魅力的なコンテンツ(授業)を提供しているか、今回のenPiTの講座はそのような問題意識のなかで行った。ウェブプログラマになりたい人向けにチューニングした授業になっている。
来年度の募集ももうすぐ開始される。多くの参加をお待ちしている。
関連日記
社会人大学生の国際比較 id:hyoshiok:20140317:p1
enPiT第2回ビジネスアプリケーション分野ワークショップに参加した id:hyoshiok:20140228:p1
大学の社会的役割など id:hyoshiok:20140217:p1
Demo or Die. id:hyoshiok:20140130:p1