未来のいつか/hyoshiokの日記

hyoshiokの日々思うことをあれやこれや

聖痕、筒井康隆著、読了

聖痕を読んだ。

そもそも、創作の極意と掟、読了 - 未来のいつか/hyoshiokの日記で書いた通り、創作の極意と掟を先日に読んで、なかなか面白かったところ、文学界に、東浩紀筒井康隆の対談が載っていて、最近といっても一年くらい前に上記の聖痕という作品を出したということを知った。

対談は全く持って、ネタバレのオンパレードで、それはないよという感じなのだけど、ひたすら枕詞が出てくるという設定に気を惹かれ、図書館で借りて読むことにした。

主人公は美少年で、5歳の頃、変質者に鋭利な刃物で性器を切り取られるという過去を持ち、家族ぐるみでその事件を隠蔽しつつ、1970年代から2011年までの物語となっている。去勢された男がどのような人生を歩かというテーマと昭和後期から平成の時代背景が丁寧に書かれている。

主人公は美少年として女からも男からも愛されるのだけど、去勢されているので性欲がない。なぜか人生における屈折もほとんど経験しないまま成長していく。

枕詞というか古語じみた単語がやたら出てくる。自分の語彙にはないような単語がずんずんでてくる。

クオリア、絶入、細坂の、若草の、鬼胎を抱く、囲繞する、竹小舞、岩まくな、久方の、嘖嘖溢美、峻拒、玉かづら、白露の、…

注がついているのだけど、多量すぎておいつかない。

初期の筒井康隆のドタバタとかSFじみた展開は全くなく、主人公を軸に淡々と物語が進んでいく。不思議な読後感が残る作品である。

創作の極意と掟で紹介されていた川端康成の「片腕」―(ちくま文庫)も借りて読んだ。こちらはシュールな作品だった。