ハッカーズ、Hackers、スティーブン・レビー著、再読
調べ物をしていてハッカーズを再読中。
25周年記念版があるので、koboで購入した。楽天Kobo電子書籍ストア: 漫画・小説がアプリで今すぐ読める!
Information Should Be Free. (情報は自由であるべきだ)というメッセージはしびれる。ハッカーマインドとは何か、ハッカー倫理とは何かについて、広く知らしめた功績はでかい。
IT業界がどのような方向に行くのか、その行く末の未来がまだ見えないときに本書は書かれた。当時(1980年頃)は汎用コンピュータがIT業界を支配していた。ビルゲイツは、まだまだ20代のひよっこだった。IBMが業界を支配していた時代に本書は書かれた。
第二章にハッカー倫理が宣言されている。
- コンピュターへのアクセス、加えて、何であれ、世界の機能の仕方について教えてくれるものへのアクセスは無制限かつ全面的でなければならない。実地体験の要求を拒んではならない! (Access to computers and anything which might teach you something about the way the world works should be unlimited and total. Always yield to the Hands-On Imperative!)
- 情報はすべて自由に利用できなければならない。 (All information should be free.)
- 権威を信用するなーー反中央集権を進めよう。 (Mistrust Authority -- Promote Decentralization.)
- ハッカーは、成績、年齢、人種、地位のような、まやかしの基準ではなく、そのハッキングによって判断されねばならない。 (Hackers should be judged by their hacking, not bogus criteria such as degrees, age, race, or position.)
- 芸術や美をコンピュータで作り出すことは可能である。 (You can create art and beauty on a computer.)
- コンピュータは人生をよいほうに変えうる。 (Computers can change your life for the better.)
(訳はハッカーズ、松田らによる)
Change the world for the better. (コンピュータを利用して)世界をよくしよう。という極めて楽観的な視点をハッカー達は共有していた。
またすべての情報は自由に利用できなければならないという価値観はインターネットを通じて広く共有された。ここでのfreeという意味は「無料」という意味ではなく「自由」という意味であるが、時には意図するしないに関わらず「無料」という意味で誤用されたときもあった。
特に、2000年代、P2Pソフトなどで音楽や映画などが著作権者の許諾がないまま「違法」に共有されたときは、このfreeという意味が、無料の海賊版をさすこともあった。
Richard Stallmanは、かねてよりFreeというのはFree of beer(無料のビール)ではなくFree as a freedom(自由)だという主張をしていて、彼が推進するフリーソフトウェア活動と言うのが、ソフトウェアを無料で配布、公開するというのではなく、ソフトウェアの自由を保証する運動だと言うことが、インターネット時代に広く知られるようになった。
そして著者が25周年記念版で言うように、このハッカー倫理が、あまりに当たり前になったので、若い読者達が、なんでわざわざこのようなことを明示的に記述しなければならないのか不思議に思うかもしれない。
シリコンバレーやIT業界あるいはインターネット業界と言われる場所(コミュニティ)では、あまりに当たり前で、明示的に言うのが、もはやはばかられるような常識になったのである。
にも関わらず、日本と言う地域では、必ずしも、このような価値観は未だに広く知られていない。
インターネットやIT業界がどのような価値観で動いているのか、一度、本書を読んで確認することをおすすめする。残念ながらFacebookやGoogleは出てこない。スティーブ・ジョブスやビル・ゲイツはまだ何事かを成し遂げていない。しかし、そこにはPC革命前夜の息吹がかいま見られる。
英語版のあとがき2010には25年後の業界が描かれている。IT業界の三国志である。多くの人々にお勧めしたい一冊だ。