未来のいつか/hyoshiokの日記

hyoshiokの日々思うことをあれやこれや

代替医療解剖、サイモン・シン他を読んだ。おすすめ

代替医療解剖 (新潮文庫)を読んだ。

科学的根拠に基づく医療をテーマに、様々な代替医療についてその有効性と危険性について検討している。検討している代替医療は、鍼、ホメオパシーカイロプラクティック、ハーブ療法である。付録に代替医療便覧として30種類ほどの代替医療の有効性について書かれている。

医療が祈祷師による経験と勘によるものから科学的な実験観察によって発展してきた歴史を概観する。

「医学研究に関わる全ての者にとって、結果を発表しないことは重大な職務怠慢である。なぜなら情報の公開には二つの点で大きな影響があるからだ。第一に、他の研究者に対し、結果の再現に取り組むように促すことになる。第二に、新しく得られた結果を広く知らしめることで、その知識をみんなが利用できるようになる。46ページ」

「《科学的根拠にもとづく医療》は信頼性の高い情報を提供することによって医師を助け、最適な治療を受けられる可能性を高めて患者に利益を与える。二十一世紀の私たちにとって、医療についての決定を下す際、科学的根拠(普通はランダム化臨床試験で得られる根拠)を用いるのは当然のように思えるかもしれないが、《科学的根拠にもとづく医療》の出現は、医療の歴史における大きな展開点だったのである。50ページ」

サイモン・シンの説得力のある記述によって、馴染みのない分野が生き生きと描かれている。

代替医療側の主張に対し、一つ一つ丁寧に反論を加えている。信じるも信じないも読者次第だが、私は筆者の主張には説得力があると感じた。

ネタバレになってしまうのだけど、本書で取り上げた代替医療の効果は科学的根拠はないと言い切っている。あったとしてもプラセボ効果の域を超えない。

文庫本のあとがきに本書刊行後の事件も載っていて興味ふかい。一つは英国カイロプラクティック協会から名誉毀損で訴えられたこと。それをきっかけに様々な運動が始まり、科学的な根拠がないまま治療効果をうたって、子供に施術しているカイロプラクターを見つけだし、告発するという摘発キャンペーンなどが行われた。

詳細は本書を読んでいただきたい。オススメの一冊である。