未来のいつか/hyoshiokの日記

hyoshiokの日々思うことをあれやこれや

右利きのヘビ仮説、読了

右利きのヘビ仮説―追うヘビ、逃げるカタツムリの右と左の共進化 (フィールドの生物学)を読んだ。

なにこれ面白い。

右利き、左利きというのは小さい頃からの習慣でそうなるのか、遺伝的にそのような利き腕が決まっているのか、謎だ。よくわからない。人間だけではなく動物にも利き腕があるのかないのか。本書は生き物の「右と左」に関する進化の物語だ。

著者はひょんなことから、カタツムリを食べるヘビの話を聞いて、それに興味を持つ。カタツムリは右巻きと左巻きがあって、ニッポンマイマイ族は左巻きが何種類もいるらしい。そして左巻きのカタツムリが進化してきた理由はよくわかっていない。

ここで右向きのカタツムリを捕食する生き物がいれば左向きのカタツムリは進化しやすくなるはずだ。という発想から研究を始めたという物語である。

著者はそのような捕食者を求めて西表島にフィールドワークに行く。

そしてイワセキセダカヘビというのがカタツムリを食べるらしい。そしてその頭部の図を見ると下顎の鱗が左右非対称ということがわかった。その情報をもとに歯の形状を調べてみると、予想通り非対称で右向きのカタツムリを捕食しやすい。

ヘビとカタツムリを用いて実験をしていくのだけど、フィールドワークで餌となるカタツムリを探したり捕食者であるヘビを探したり、そして捕まえたヘビに右巻き左巻きのカタツムリを餌として与えたり、言葉にすると簡単だけど、実際やるのは大変だ。読者は、単にすげー、面白いーとお気楽でいい。

適応進化は、変異・選択・遺伝の三つの条件が揃うと自動的に進行する現象である。(59ページ)
変異というのは、同種の個体間に見られる表現型の変異で、うわべの違い(例えば毛の色や走る速さなど)のこと。この違いが原因となって、生き残る確率や残せる子供の数に違いが生じることがしばしばある。これが選択である。そして、進化する形質は遺伝するものに限られている。例えば足の速さが遺伝して、それによって生き残る確率が高くなると、適応進化する。

セダカヘビの歯の本数が左右で異なる。これには機能的な意味があるはずだ。そして、それが右巻きのカタツムリを食べるための特殊化だと結論するには、行動実験を行って証拠を得る必要がある。

200ページに満たない本なので、すぐに読める。若手生物学者のフィールドワークの実際などもわかって面白い。夜中に亜熱帯の密林に入っていくなんていうのは自分には絶対できないと思った。おすすめである。