「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明、伊神満著、読了、濫読日記風 2018、その20
「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明を読んだ。
自分にとっての忘れられない一冊に「イノベーションのジレンマ (―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press))」がある。日本語訳が出てすぐ読んだ。2000年頃の話だ。
シリコンバレーあたりの経営者は皆読んでいる。(かどうかは統計を取ったわけでもないので実情は知らないが、破壊的イノベーションの怖さを知らずにベンチャーをやっているとしたら、不勉強すぎるし、知っていたとしても自分の組織がその罠にはまらないようにするのは至難の技である。日本では実感としてほとんど理解されていない。(個人的な感想です))
インターネット時代のベスト書籍の一つだ。
ムーアの法則に代表される変化が早すぎる時代にパラダイムが一夜にして変わる時の怖さを豊富な事例で実証している。
現場の人間としては、なるほどそういうことだったのかという腹落ちした理論である。実務家としてはそれ以上でもそれ以下でもなく、ではどうするかが今日の問題になる。
日本の半導体ベンダーが圧倒的な競争力を持っていたのに、没落したのはなぜか。Intelは日本の半導体ベンダーに完膚無きまでやられたにも関わらず生き残ったばかりではなく、CPUで圧倒的な競争力を持つまで復活したのは何故なのか。
「技術革新が巨大企業を滅ぼすとき」というタイトルが付いている「イノベーションのジレンマ」は自分にとってのバイブルだ。
そのバイブルを解説したのが「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明である。
前置きが長いね>自分。
本書は「イノベーションのジレンマ」を実証的データを元に検証している。「イノベーションのジレンマ」ファンとしては読まざるを得ない。
FEDという読書会で読むというので参加せざるを得ない。
自分のIT業界で仕事をしていた実感を軸に本書をふむふむと言いながら読んだ。
本書は著者の博士論文をもとに一般向けにわかりやすく書いたらしい。自分にとって最も面白く参考になったのは、実のところ博士論文の骨子をわかりやすく一般向けに記した部分ではなく(それはそれで大変勉強になったのだけど)、著者と博士論文の指導教員とやりとりだ。266ページから始まる、『君の「問い」は何だ?』という対話だ。
研究によって解くべき問題。それをリサーチクエスチョンと呼ぶが、その問いを立てることが研究にとって最も重要になる。自然科学だろうが、社会科学だろうが、経営学であろうが、全ての学問にとっての重要な活動は「問い」を立てることだ。
その「問い」とは何か、どのように発見していくか。博士課程の学生と教員が対話から生み出す。そのようなプロセスを本書では面白おかしく記している。
自分にとっては10章の対話が本書の中で最も面白かった。
博士課程の学生がどのように博士論文を作っていくか、書いていくかの参考書としても興味ふかい一冊だった。
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