未来のいつか/hyoshiokの日記

hyoshiokの日々思うことをあれやこれや

創造的論文の書き方、伊丹敬之著、読了、濫読日記風 2018、その44

創造的論文の書き方を読んだ

この日記で何度も触れているように論文の書き方については「理科系の作文技術 (中公新書 (624))」がバイブルだと思っている。細かいテクニックについては類書を参照するとしても基本は「理科系の作文技術」だ。*1 *2

知人のタイムラインで本書を紹介されていたので手にとってみた。

前半が伊丹敬之と彼の教え子との対談、後半が具体的な論文作成技法になる。

学問分野を日本では自然科学系(いわゆる理科系)と社会科学、人文科学系(いわゆる文系)と分けることが多いが、本書は主に文系の論文作成について議論している。
(研究という行為は理系も文系も若干の方法論の相違があるとしても共通の何かがあると思っているので、必ずしも文系理系というわけ方を自分は取らない。)

実験レポートなどはすでに議論すべき問題が与えられているので、本書で議論する論文の範疇から若干外れる。本書で議論している論文の対象は「いい研究」を「いい文章」で書かれたもので、それを「創造的論文」と読んでいる。(2ページ)

創造的研究をまとめたものが創造的論文で、創造的研究をどのようにするかという方法論を紹介するという立て付けになる。つまり、「目に見える現象の背後に隠されている原理・原則をどう発見するか。それが研究活動の本質的な内容である」。(2ページ)

対話篇では、伊丹と弟子たちが1)研究をするということ、2)文書を書くということ、3)考えるということ、勉強するということについて議論している。その議論が伊丹ゼミでの指導あるいは対話のような体裁で表現されている。読者は伊丹ゼミでの議論を聞いているような臨場感を味わう。

経済学での研究の方法を、ハーシュマンの「経済発展の戦略」を題材に語るくだりがある。(37ページ、60ページ)。理論と現実からどのように研究していくかの事例から、研究方法論を抽象化している。

研究の仕方、文章の書き方を後半の概論編で紹介している。1)テーマを決める、2)仮説と証拠を育てる、3)文書に表現する、4)止めを打つ、5)小さな工夫、ふだんの心がけ

創造的研究というものがどのようなものか、どのように進めるのかという問題についてヒントに満ちたものになっている。

じっくり読んで創造的研究というものを自分の血肉にしたい。実践できるように研鑽を積みたいと思った


濫読日記風 2018