知的生産の技術、梅棹忠夫著、読了、濫読日記風 2018、その18
知的生産の技術 (岩波新書)を読んだ。
大昔に読んだのだが、妙に記憶に残っている部分もあった。
約50年前(PCもインターネットもない時代だ)の知的生産の技術なので、現代にそぐわない点もあるが「学校では知識は教えるけれど知識の獲得のしかたはあまり教えてくれない」という問題設定はいまだに有効な気がする。
この50年で「知的生産」に関わる人口も増えた。かつては教員や専門職など限られた人たちだけだったが、今や、会社員はほぼ皆なんらかの形で「知的生産」に関わっていると言っても過言ではない。
仕事で文書を書く必要のある人はほぼ全て「知的生産」をしている。
本書で扱うことは広い意味での勉強であり情報生産である。
その基本的なツールとして、B6サイズのカードを紹介しているが、流石にカードを利用した情報の整理というのは流行らないだろう。ただ、手帳の使い方や、ノートやカードの使い方などは参考にはなる。情報を規格化するというのは検索可能性(情報の再利用性)をますので重要である。
読書について、創造的読書の項で、「読書においてだいじなのは、著者の思想を正確に理解するとともに、それによって自分の思想を開発し、育成することなのだ」(127ページ)としている。著者とはまったくべつの、「あらぬこと」を考えんながらよむ(126ページ)というのはまったくその通りだなあと思った。
7章で「ペンからタイプライターへ」は日本語とかな文字タイプライターなどについての記述があるが、PC時代になって、陳腐化した記述である。たった10数年で日本語入力は手書きからPCを利用したものになった(1960年代後半から1980年代前半)。
9章で「日記」について記している。ブログ時代になって、個人の記録を電子的に残せるようになった。自分という他人との文通として日記の形式で記録を残しておくことは価値がある。経験の記録をどのように記すかということはもう少し議論されてもいい。科学者は実験ログを残す。それと同様なことを、記憶せずに記録する。(189ページ)
「技術の開発の発展のためには、成果よりも、それに至るまでの経過の記録と、その分析がたいせつである。ところが、そのほうは、信じられないくらいおそまつなのである」(193ページ)
10章「原稿」、11章「文章」が紹介されている。この章は、のちに理科系の作文技術 (中公新書 (624))、木下是雄著、という名著によって補完される。
本書はPCもインターネットもない時代に書かれた、ある意味アナログ時代の知的生産の技術の古典的名著だ。ハウツー物の知識を述べるのではなく、基礎となる考えを述べた物なのでいまだに読むたびに発見がある。陳腐化していない。
若い人にオススメしたい。
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