未来のいつか/hyoshiokの日記

hyoshiokの日々思うことをあれやこれや

第100回カーネル読書会にLinusが来た件

後で書く書いた。

第100回カーネル読書会LinusをはじめとするLinux Kernel Hackersにいっぱいいっぱい来てもらった。

時系列に言うと、こんな感じだ。2008年の春頃(調べてみたら、夏ではなくて春頃に2009年のKernel Summitは日本でやるとアナウンスされていたようだ)から、2009年のKernel Summitが開催されるので、そこでカーネル読書会BoFを開催して、そこにLinusを呼ぼうというようなことを言っていた。id:publichtmlに指摘されて気がついたのだけど、1000speakersでそんなことを言っている。*1

それ以来、カーネル読書会の前説で、Kernel Summitの時にはLinusを呼ぶんだ、カーネルハッカーを呼ぶんだと繰り返し言ってきた。カーネル読書会の常連の皆様は、どーやって呼ぶかという技術論にいくわけだけど、それ以外の人たちは、ふーん、というか、それがどーしたちう感覚である。

LinuxとかLinusとか知らない人は、あっそうという感想しかもたない。当然である。Linusの名前を知っている人は、それはいいですね〜という。Linusは、Kernel Summit以外のイベントにはほとんど参加しない。10年位前のLinux Worldなどには出ていたが、企業イベントで講演をするというのは最近ではほとんどない。日本に来たのも2002年の京都賞以来だ。

2001年にもLinusの自伝的著書の「それがぼくには楽しかったから (小プロ・ブックス)」のプロモーションで来日したが、それは出版社が仕切っていたので、コミュニティ系のイベントはなかったと思う。


その意味で、Linusの来日は、またとないチャンスだったのである。

YLUG(横浜Linus Users Group)のメンバーで海外出張でLinux関連の会議などに出る人々には、おりあるごとにLinusカーネル読書会の宣伝活動を託しておいた。特にLinux Foundationのおそのいさんには、いろいろお願いいした。

o薗iさん、Linusに出演交渉するの図。ぼやけているのは勿論オーラ;... on Twitpic

Kernel Summitは、招待者のみ参加のイベントなので、一般人がそれに参加することは不可能なのだが、そのあとにJapan Linux Symposium (#jls)という会議が開催されるので、そこにどうにか潜り込もうという作戦をたてた。正攻法としていくつかBoFネタとか発表ネタを投稿したのだがあえなく撃沈。ということで、開催期間中にカーネル読書会を開催し、そこにLinusを呼ぶという方向へ微妙に軌道修正をした。2008年の時点で、80数回カーネル読書会を開催していたので、切りのいい第100回記念、しかもYLUG結成10周年記念だしということにした。一月に一回位のペースで行けば、ちょうどいい感じである。

第98回が9月10日で、第99回が10月13日開催というのは、無理やり回数をあわせたといわれてもしかたないのであるが、その通りである。できれば8月に第98回を開催したかったのであるが、セキュリティ&プログラミングキャンプ2009や夏休みなどもあり、ちょっとばたばたしてしまった。

昨年の開催したカーネル読書会番外編 http://d.hatena.ne.jp/hyoshiok/20081218#p2 には中学生の飯田さんが参加してくれて、おじさんたちは大喜びだったのだけど、そこでも来年はLinusを呼ぶから、英語で自己紹介できるようになろうね〜〜なんてことを約束した。*2

まあ、10年前にLinusを呼ぼうとか考えていたかは覚えていないのだけど、2001年の来日時にLinusに会ったとき、カーネル読書会というのをやっているんだという自己紹介をして、いつか参加してねと言ったら、コードを読むなんて退屈なんじゃないのかなどとコメントをもらったのは覚えているので、少なくともそのころからLinusを呼ぼうと考えていたと思う。実際、海外から著名なハッカーが来る場合、できるかぎり日程を調整して、カーネル読書会で発表していただけるなら発表していただくことをお願いしている。

そんなこんなでLinusを呼ぶことに本気だということはカーネル読書会の皆様は十分理解してくれていたと思う。

JLSの正式プログラムにはもれてしまったけど、ボランティアスタッフを募集していたので参加することにした。YLUGからも多数参加していて、7~8割はYLUGメンバーだったと思う。おまいらボランティア好きだな(笑)。カーネル読書会に何度も参加している人はボランティア力が高いということが図らずも露見してしまったわけであるが、誰かに指示されて動くのではなく自立して動くのでスケールする動きをする。例えば、JLSの基調講演はLinusやまつもとさんが行うので、1000人を越える登録者があって、850個の同時通訳レシーバを用意して提供したのだが、終了時にそのレシーバを回収し、全数チェックをするという作業を20分ちょっとで完了した。すげー、ボランティア一同、イヤフォン、レシーバをちゃかちゃか整理する。あっという間に終わったときには一同拍手だ。気持ちよかったよ。

世界中のカーネルハッカーが土曜日に来日し、日曜日にはこれまたボランティアが高尾山ピクニックやら東京江戸博物館やらそれぞれ案内したりして親睦を深めていった。

Linusを呼ぶときの基本的な作戦はカーネルメンテナーを招待し、メンテナーから一緒にいこうぜと誘ってもらうというものだ。なので、カーネルメンテナーに楽しんでもらうことは重要なのである。

第100回の会場は、JLSの会場のそばということで当初ダイビルの某所をお願いしようと目論んでいたのだが諸事情でそれがかなわなかった。10月に入ってまだ場所が決まっていなかったので、YLUGメーリングリストで助けをもとめたところ、高松さんが秋葉原駅前のベストなポジションを教えてくれた。それも破格の条件で貸していただけた。

第99回カーネル読書会でノベルの桐生さんが、SuSEの懇親会を同時開催したいというお申し出があり、もちろん一緒にやりましょうということにした。TLUGや他のコミュニティとも一緒できればよかったと思うのだが調整がつかなかった。Kernel SummitおよびJLSの公式行事は日曜日から金曜日までつまっていて、木曜日(22日)だけが空いていたので、スケジュールが発表のあった時点で自動的にその日しかなくなってしまったのである。

高松さん、桐生さんと会場側との打ち合わせを10月16日(金)に行った。この時点で、会場費、つまみ、寿司などの持ち込み、差し入れはノベルさん持ちで、ピザとビールはカーネル読書会参加者から1000円徴収、赤字が出れば、今までのおつりから補填ということになっていた。その後、ノベルのパートナー参加者の皆様は無料でYLUGメンバーは1000円というのは受付時に煩雑なので、すべてノベルさんがスポンサーしていただけるということになった。ありがたくお願いすることにした。

わたしは、21日の日だけのボランティア活動であったのだが、当日id:naruoga*3さんと一緒に2階ホールA/Bの進行役などをやらせていただいた。昼飯時にフライヤー欲しいよねなどという話になったのだが、ネットプリントというのがあって、それで印刷できますよ、じゃわたし作ります、とかいう感じで、気がつくと第100回カーネル読書会の英語版フライヤーが出来上がっていた。魔法を見るようだ。そんで、それをJLSのキーノート会場にいたカーネルハッカーに配って、明日パーティーあるから来てね、場所はここだよ〜。

わたしは、lwn.net http://lwn.net/ のJonathan担当なので、メールでもリマインドしておいた。彼は、前回来日したときにもカーネル読書会で講演してもらったので、顔見知りである。*4

そんなこんなで当日を向かえたのであるが、まだ当日の4時の時点でLinusが来るかどうかの確証はない。

http://twitter.com/hyoshiok/status/5064560935 JLSな人はカーネル読書会よろしくです。

http://twitter.com/itoh_bmark/status/5064580218 @hyoshiok 何人か連れて行く予定になってるけど、状況が状況なんで、約束はできないです。
4:57PMの時点でLinusが来るかどうかの確証はなかった。さすがの伊藤さんも弱気発言である。

そして、5時半ころから続々と集結するYLUGメンバー、会場の設営もあっという間に終わる。ピザとビールが到着したので、早めにどんどん入ってもらう。JLS会場の吉田さんからいついけばいいのという電話が来たので、ピザもビールもあるので、いまからでもOKとかえす。17:40位である。

そして、18時前に多数のカーネルハッカーとともにLinusが登場した。

Linus来ちゃったよ。ついに来ちゃったよ。

http://brightkite.com/objects/310e9388683ac14f1f9034aa2164b2c4?referer=http%3A%2F%2Ftwitter.com%2Fitoh_bmark

そして、適当にビールとピザをつまんでもらっていて、特に乾杯もしないでだらだらと参加者同士でお話をしてもらう。日本人の場合、乾杯の音頭がないと手持ち無沙汰で、自己紹介もできない人が多いのであるが、さすがにカーネル読書会の連中は勝手にほっておいてもどんどんネットワークを広げてくれる。素晴らしい素晴らしい。

18時20分ころから風穴さんが日本でのLinuxの歴史などを解説してくれる。これまた、素晴らしい。

その後、わたしのプレゼン。

Linusや世界中のカーネルハッカーの前でカーネル読書会のお話をできる僥倖。うれしかった。いっぱい、人が集まってくれてうれしかった。

YLUGの仲間がLinusや世界中のカーネルハッカーを連れてきてくれた。うれしかった。いっぱいいっぱいうれしいことをもらった。

Twitterで、帰宅後、熱にうなされながら、感謝の気持ちをいっぱいいっぱいつぶやいた。コミュニティの素晴らしさを再確認した。仲間からいっぱい宝物をもらった。

http://twitter.com/hyoshiok?max_id=5073154174

http://twitter.com/hyoshiok/status/5073108755 「ありえないだろう、そう多くの人は思う。だけど、今日あの場所に居た人は理解してくれる。ユメのチカラ。」

そんなお話を、楽天テクノロジーカンファレンスのLTに飛び入り参加して行った。熱かったぜ。

ご清聴ありがとうございました(深々とおじぎ)