未来のいつか/hyoshiokの日記

hyoshiokの日々思うことをあれやこれや

コインロッカー・ベイビーズ、村上龍著、濫読日記風、その39

新装版 コインロッカー・ベイビーズ (講談社文庫)を読んだ。

村上龍芥川賞を受賞したデビュー作の限りなく透明に近いブルーからリアルタイムで読んでいるのだけど、その時は正直ピンとこなかった。二作目の海の向こうで戦争が始まるは、あってもなくてもいいような作品だと思った。

そして、1980年にコインロッカー・ベイビーズを読んだ。

衝撃だった。コインロッカーに遺棄された赤ん坊、ハシとキク。

コインロッカーの暑さと息苦しさに抗して爆発的に泣き出した赤ん坊の自分。(中略)どんな声に支えられて蘇生したのか、思い出した。殺せ、破壊せよ、その声はそう言っていた(125ページ)

陸上の選手のキク。ミリオンセラーシンガーになるハシ。鰐を飼うアネモネ。この三者が小笠原の深海に眠るダチュラの力で街を破壊しようと試みる。

圧倒的なスピード感で一気に読ませる。

村上龍はこの作品で作家としての地位を確立した。

この作品の後に、愛と幻想のファシズム希望の国エクソダス、半島を出よなどの近未来小説の系統が続く。

最近はTVでコメンテータとして村上龍をみることが多いが、彼は作家なのである。この作品があったおかげで、村上春樹村上龍の今があると言って過言ではない。同時代に生きる、二人の村上の方向性を決めた作品だ。

自分は村上龍のいい読者ではない。未読の作品も多い。だけどコインロッカー・ベイビーズは自分にとってのかけがえのない一冊だ。久しぶりに読んでみて、詳細は忘れていたが、躍動感はそこに確実にあった。

未読ならば是非お勧めしたい。




濫読日記風