未来のいつか/hyoshiokの日記

hyoshiokの日々思うことをあれやこれや

OSSのサポート

OSSが社会の中枢で使われるようになってきて誰がOSSをサポートするかと言う問題が顕在化してきた。プロプライエタリなソフトウェアであればそれを開発した会社がサポートをするという以外の解はほとんどないし、それを前提にビジネスは回ってきた。サポートの継続性という意味で開発した会社の安定性というのが議論されたりもしてミッションクリティカルな分野ではソフトウェアの機能ではなく実績とか会社の規模が選考基準になったりした。
OSSの時代になるとそれが変わるのか変わらないのか?プロプライエタリなソフトとOSSの顕著な違いはOSSの場合、原則としてエンドユーザーに誰でもサポートサービスを提供できるしライセンス上それを妨げるものはほとんどない。プロプライエタリなソフトの場合、例えばOracleというデータベースがあったとしてそれをサポートできるのは最終的にはOracle社以外ありえないのであるが、OSSであるMySQLとかだったらMySQL社以外の誰でも技術力資本力気合があればサポートサービスを提供できる。OSSはサポートが不安だという漠然とした印象があるが原理原則で言えば誰でもそのサービスを提供できるのでプロプライエタリなソフトウェアよりも安全性は高いはづである。
我々は自由市場にいる以上、需要と供給のバランスの中でサポートサービスの供給はされる。必要としている人がいればそれを提供する人が現われる。価格はその需要供給曲線で決定されるはづである。もちろん市場はそのような理想的な環境ではない。情報の流通にはコストがかかるし消費者はすべての情報を100%入手し100%合理的な判断をするわけでもない。しかし原理的にはベンダロックインが働きにくいので適度な競争が発生しそのため価格に関しては合理的な設定がされ、高止まりするということにはなりにくい。
手厚いサポートが必要であればお手軽なサポートに比べて高い価格を払わなければならないし、逆もまた真になるはづである。OSSのサポートはそのような市場原理によって供給されるはづである。にもかかわらづそうはなっていないような印象がある。
わたしはOSSの利用にあたってはサポートサービスが価値の源泉であると考える。ソフトウェアのライセンス料金でかせぐというモデルではなくサポートサービスに価値が発生すると言うビジネスモデルだと思う。OSSの場合製品ライセンスにチャージすることはできなくはないが非常に難しい。コミュニティで開発されたものをお金を取って売ることはできなくはないが、高価な価格付けをすれば同じものを安価で提供するものが出てきて結局は価格はある一定水準で落ち着く。一方サポートサービスの場合ライセンスと違ってソフトウェアのバイナリに価格をつけるのではないのでコピーは不可能だし価値は提供されたサービスに比例するはづである。そして価値と価格は比例すると考える。過度に単純化して言えば顧客にとって価値の高いサービスを提供できればそれなりのお値段を請求できるし、ほどほどのサービスしか提供できなければそこそこのお値段しかいただけない。
例えば長期間サポートというものに価値を見出す顧客には長期間サポートというサービスは高く売れるがそうでない顧客には売れない。当たり前の話である。ミドルウェアソフトウェアが検証されているということに価値を見出す顧客にとってミドルウェアソフトウェアを提供する会社の保証と言うのは価値がある。当たり前の話である。
5年前ミラクル・リナックスというディストリビューションを作ったときわたしたちは価格を5万円と設定した。当時のレッドハットは50ドル程度で流通していたことを考えると1桁高い価格を設定した。我々の価値はOracleをはじめとしたソフトウェアの検証が完璧(?)であると言うこととハードウェアの検証を徹底して行ったということである。当時LinuxOracleを素のレッドハットにインストールすることは百数十ページあるOracleインストールマニュアルをすみからすみまで熟読しないとできなくて、素人には到底手に負えるものではなかった。カーネルのパラメータもデフォルトではインストールできないので設定を変えなければいけなかったのだが多くの人にとってカーネルパラメータを変更することは簡単ではなかった。O4L(Oracle for Linux)というメーリングリストがあってLinuxOracleをインストールする情報が交換されていた。そのような雑事をはじめから設定したのがミラクル・リナックスであった。Oracleをインストールするためにoracleというユーザアカウントを作成しなくてはいけないのだが、その手の設定はOracleInstallNavigatorというGUIツールが一切合財面倒を見てくれた。技術的なことを言えばそのような設定はすべてインストールマニュアルのどっかに記されている。(技術的な新規性はほとんどない)インストールマニュアルのバグというのも当然あってそれに対するエラッタについてもOracleInstallNavigatorは考慮されているので多くの人がはまる地雷はあらかじめ対処がしてある。それらの情報はどこかに公開されているので技術力のあるユーザであればOracleInstallNavigatorなどを使わなくてもOracleのインストールは鼻歌交じりにできるのであるが、多くの人にとっての価値はそのような雑事に煩わされることがなく簡単にインストールできるということである。インストールに1日かかっていたことが30分で安全にしかも確実にできるのであればそちらのほうがお安いという立場である。ソフトウェアベンダ製品をあらかじめ検証するという当たり前のことを世界で始めて商用Linux製品としてやったのがミラクル・リナックスである。エンタープライズの世界では当たり前のことであるが当時の商用ディストリビューションというのは3ヶ月に一回バージョンアップしてそのたびにソフトウェアは動かなくなるし、そもそも互換性などという概念とは程遠いモノの作りになっていたし、動作検証と言うのは動けばいいやと言うレベルのものであったし、新バージョンが発売されるやいなや昔のバージョンのサポートは終了というサービスであった。今となっては信じられないかもしれないが、それが当たり前であった。
われわれはエンタープライズビジネスをする上でそのようなビジネスモデルは破綻すると考えていたし、中長期のサポートを提供することにビジネスチャンスを見出していたので当初から検証やサポートに重きを置いてビジネスモデルを設計し、実装していた。http://www.miraclelinux.com/support/linux/policy.htmlをみると5年前に発売した製品についても2007年末までサポートすることをコミットしている。ミラクル・リナックスの1.0と同様のサポートを提供しているディストリビューションをわたしは知らない。(当時のRed Hat 7.xのサポートはとうに終了している。そのために3rdパーティである10アートニがそのようなサービスを提供している)
後にRed HatがEnterprise Linuxということで7年サポートを表明したが我々から遅れること何年か経ってである。
インストールにはまって時間を無駄にするくらいならはじめからわれわれに相談してほしいと思う。長期的なサポートが必要ならわれわれに相談してほしいと思う。われわれはOSSのサポートにコミットしているしそれでビジネスをしているのである。そのようなサービスを購入することが長期的にみてユーザの利益になるからお勧めしているのである。われわれはサービスを提供する。ユーザはそれを購入することによって利益を得る。それが持続可能なビジネスの原点である。
本日の日記は100%未承諾広告なり。