パクればいいんだよパクれば
イノベーションが新しい産業を興し雇用を生み社会を豊かにする。多分それは間違いないだろう。
本書は、イノベーターではなく模倣者(イミテーター)に焦点をあてている。企業が生き残って行くためには、模倣(イミテーション)はイノベーションと同じくらい重要な意味を持っている。にも関わらず、それの重要性については十分に議論されていない。暗黙のうちに、イノベーションは善であり、イミテーションは悪であるという呪縛にかられている。
科学も芸術も模倣から生まれている。
オープンイノベーションは、自組織が生み出せなかったものを外部とのコラボレーションとによって行う。その対極にあるのが、自社の技術に拘って、ビジネス的にも技術的にも劣ったものを投入して自滅して行くというNIH症候群である。
オープンソースはいいものをコピーすることによって発展している。それはアルゴリズムであったり、ベストプラクティスとして知られる、いい開発の習慣であったり、ワークフローだったり。
模倣は悪いことではない。この価値観が新鮮に感じられるほど、われわれはオリジナルでないといけないという視点に毒されている。新規性がどうだとか、オリジナリティーがどうだとか。
「模倣者は自己満足にも陥りにくい。イノベーターやパイオニアは成功体験に縛られて、背後に迫り来る脅威を軽く見るようになってしまいがちだ。模倣者は先発者を追い越した自らの経験から、あとから追ってくる者たちを過剰なまで警戒し、防御をしっかり固める(12ページ)」
「イノベーションは熱狂を呼び起こすが、模倣は淡々と行われる(39ページ)」
組織学習の深い部分があるような予感がする。
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