未来のいつか/hyoshiokの日記

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グーグル、アップルに負けない著作権法、角川歴彦著。読了

グーグル、アップルに負けない著作権法 (角川EPUB選書)を読んだ。

角川書店株式会社KADOKAWA)の会長の角川歴彦が、クラウド時代のビジネスの現場を赤裸々に綴った。現場のビジネスの当事者がIT時代の本質を語る訳だから面白くないはずがない。

タイトルに「著作権法」というのが入っているので法律論かと誤解する人もいるかもしれないが、本書の肝は、IT業界の三国志である。主人公はグーグル、アップル、そしてアマゾンである。

彼らのビジネスの本質は何か。それに著作権がどのような役割を持っているのか。著作権を縦糸に企業経営者の三国志を横糸に織りなしていく。

角川が直接交渉した相手などとのエピソードを織り交ぜながら、クラウドベンダーの戦略を探っていく。角川書店という日本の老舗出版社の会長が自らのビジネスの土俵の上でグーグル、アップル、アマゾンと対峙したのか興味は尽きない。

第1章コンテンツのクラウド型流通と情報端末が変える著作権
第2章スマートテレビ著作権
第3章エコシステムと著作権
第4章著作権の現状と将来を語る(対談)

アマゾン、アップル、グーグル、フェースブックの4社をギャング4と呼ぶ。そのギャング4が著作権者たちとクラウドプラットフォームでどのような対立をしているのか、どのようなエコシステムを構築しているのか、角川の交渉の当事者として綴っている。

伊藤穰一著作権をいくら強くしても、著作権者は儲からない。間違ったところに集中しちゃっているんだ。今の世の中というのは、いかにプラットフォームを作るか、ディストリビューションを持つか、ユーザーを持つか、そういうところに力が移っちゃっている。」52ページ

著作権法の第一条には、「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする」とある。
私は第一条の文章が無性に好きだ。302ページ

著作者、事業者、ユーザー、この三者のバランスが重要だ。日本の事業者は主に著作者との濃密な関係のもと出版文化を創造して来た。一方でクラウドベンダーはむしろユーザーの利便性に比重を置くことで発展して来た。

著作権法も時代の背景にある理念と社会実態そして加速化する技術変化に対応することは必須だ」303ページ。

わたしは角川の上記の主張に同意する。

本書はITでのビジネスを考える上でも様々なヒントを与えてくれる良書である。おすすめする。