未来のいつか/hyoshiokの日記

hyoshiokの日々思うことをあれやこれや

弱いつながり、東浩紀著、読了

弱いつながり 検索ワードを探す旅を読んだ。

インターネットがどんどん高度化して自分の見ているインターネットはあなたが見ているインターネットと異なってくる。検索キーワードによって表示されるものがインターネットになる。そして検索キーワードを自分が選んでいるのではなくネットによって選ばされている。「自由に検索しているつもりでも、じつはすべてグーグルが主査選択した枠組みの中(5ページ)」ということである。

「グーグルが予測できない言葉で検索する」ためにどうするか。本書の答はシンプルだ。「場所を変える」

アメリカの社会学者、マーク・グラノヴェターが一九七〇年代に提唱した有名な概念に「弱い絆(ウィークタイ)」というのがあります。(中略)多くのひとがひととひととの繋がりを用いて職を見つけている、しかも、高い満足度を得ているのは、職場の上司とか親戚ではなく、「たまたまパーティーで知り合った」といった「弱い絆」をきっかけに転職したほうだということでした。
12ページ

人生の充実のためには、強い絆と弱い絆の双方が必要だと本書は主張する。ネットは強い絆をより強くする。そして弱い絆を発見するために場所を変える。

その方法の一つとして旅行を勧めている。旅行をすることによって、村人(そこに住んでいる人)と知り合うという。観光客という無責任な立場にたつことによって見えてくることがある。
東氏はインドに家族旅行に行ったエピソードを紹介している。バックパッカーの情報はインターネットであふれているが、家族旅行の情報はほとんどない。ケーララ州というのがあって日本ではほとんどしられていないのだけど、現地に行くことによってその存在を知る。それが結構面白い。
移動時間に旅の本質がある。その時間でいろいろ考えることがネットで検索することとの本質的な違いとなる。物理的に移動して現地に行って実際経験する。その経験が場所を変えることになる。
村人とのやりとりによって、観光客は村人から現地のしきたりやちょっとしたことを学ぶ。
観光客の五つの心得として、本書は1)無責任を怖れない。2)偶然に身をゆだねる。3)成功とか失敗とか考えない。4)ネットには接続しておく。5)しかし無視する。
現地でリアルに検索キーワードを発見したらそれを検索する、しかし、ネットの人間関係は切断する。この割り切りが清々しい。
せっせとFacebookに投稿している場合ではないのである(自分はやっちゃう)。リアルなキーワードを発見して行くことに集中すべきだと本書はいう。まさにその通りだと思った。

「旅で肝心なのは、日常と異なる環境に自分の身を置き、ふだんの自分では思いもつかないことをやってしまうこと(153ページ)」である。

なかなか面白かった。お勧めの一冊である。