未来のいつか/hyoshiokの日記

hyoshiokの日々思うことをあれやこれや

社会的共通資本としてのOSS

いきなり漢字ばっかりのタイトルで申し訳ない。(ぺこり)社会的共通資本ってなんだべ。岩波新書、「社会的共通資本」、宇沢弘文ISBN:4004306965 をひもとく。

ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を安定的に維持する----このことを可能にする社会的装置が「社会的共通資本」である。(とびら)

社会的共通資本は、自然環境、社会的インフラストラクチャー、制度資本の三つの大きな範疇に分けて考える事ができる。大気、森林、河川、水、土壌などの自然環境、道路、交通機関上下水道、電力・ガスなどの社会的インフラストラクチャー、そして教育、医療、司法、金融制度などの制度資本が社会的共通資本の重要な構成要素である。都市や農村も、さまざまな社会的共通資本からつくられている。(ページii)

いきなり大げさな話になっちゃったが、そーゆー事らしい。ITは通信とか流通とか製造とか金融とか、社会的インフラストラクチャーで利用されるわけだから、その構成要素として、どーあるべきかという議論も当然されなければならないし、ITの重要な要素としてOSS(Open Source Software)がどのような分野でどのような役割を担いつつ貢献をするのかなどという議論もしなければいけないと思う。
一企業が自己の利益を最大化しようとすると、様々な弊害が出て来る。環境汚染とか、そーゆー話である。例えば車という商品は環境汚染を引き起こすだけでなく、交通事故で毎年多くの人を亡くしている原因になってもいる。それを社会的なコストとしてどう評価するかという問題もあったりする。そのような問題に対してどのような制度的前提条件というのが必要なのか?というような事が社会的共通資本のあり方で議論されているらしい。
まあそこまで大げさな話にしなくても、ある基幹システムを一社の技術ないし製品に100%依存する事ははなはだ危険である。という事に異論をはさむ人はそう多くないと思う。コンピュータの根幹であるOSについて言えば現状はマイクロソフト社の独占状態である。現状はそうである。それに対するアンチテーゼとしてOSSとしての期待感がある。公開されている技術情報によって一社への依存性からの回避が可能になるというシナリオである。
一社独占の弊害は、単に上記のような依存性の問題だけではなく、製品価格の高止まり、製品品質の低下、サービスの低下など様々なものが考えられる。健全な競争があってこそ消費者に利益をもたらす。ということでオルタナティブとしてのOSSへの期待感が高まっているのである。
現実論で言うと、とはいうものの、商品価値としてOSSの価値が低ければ普及も促進もするわけがないので健全なオルタナティブとしてOSSが成長し一社独占の弊害をどれだけ軽減できるか、そのためにどうしなければならないか。更に言えば商用ソフトウェアと比べて、OSSにした場合、OSSに依存することによって、より安全になるのか?それともより危険になるのか?という観点から冷静に判断、評価しないといけない。それは単にOSSの機能を6つの品質特性(機能性、信頼性、使用性、効率性、保守性、移植性)で評価するだけでは十分ではなくて広く社会全体でどのように支えるか、そのためにはどのような制度的前提条件が必要かというところまで考察しなければならない。
OSSが社会に対するdependable(依存可能)な共通資本になるためには何が必要でわれわれは何をしなければいけないか?
わたし自身は商用ソフトウェアの存在を否定しない。商用ソフトウェアでもdependableなシステムを構成する事は可能だし多くのシステムは商用ソフトウェアによって構成されていることも知っている。一方でインターネットをはじめとする開かれたシステムの根幹の多くにはOSSが多数利用されている。インターネットはOSSの技術にdepend(依存)している事も間違いない。OSSの得意な分野もあれば不得意な分野もあり、同様に商用ソフトウェアの得意な分野もあれば不得意な分野もある。
しかしながら社会的共通資本の構成要素としてのソフトウェアは徐々にOSSをベースにしたものに置き換わって行くように思う。そしてそれの方が、一社独占の商用ソフトウェアに依存する社会より、より安全でしかもより安いコストで社会を構築する事が可能であると考えている。OSSには社会的制度としての教育の観点からも非常に大きなメリットがあり、人類の共通の資産としての価値もある。
今日の日記は漢字が多くてしかも理屈っぽい。すいません(またまたぺこり)。アルコールも飲まずシラフで記している日曜日の昼下がりである。さて、飲むか(うひょうひょ)
わたしの9月28日の日記 id:hyoshiok:20040927 にトラックバックをいくつか頂いたが、それに関するTバック返しはまた後日。(と、期待を持たせつつ続く、かもしれない…)