入札について
この日記の読者にとって、入札という仕組みはそれほどなじみのあるものとは思えないけど、ちょっと調べてみた。
政府調達の仕組みとして入札というものがあることはさすがに知っていると思う。時々、入札談合事件みたいなのでマスコミを賑わせたりするあれである。しかし名前を知っていてもその仕組みは知らないという人は少なくないと思う。わたしもその一人だ。
競争参加者の資格に関する公示
https://www.chotatujoho.go.jp/va/com/KOUJI.html
というのがあって、一般競争入札に応募しようとしたら、その資格を取らなければいけないようなのだけど、その審査基準というのが大企業が圧倒的に有利になっている。
別記4 付与数値 〔掲載順序 項目 段階:付与数値(年間平均 高、自己資本額の合計及び営業年数については 物品の製造、物品の製造以外の2区分の付与数 値を示し、流動比率については共通の付与数値 を示し、機械設備等の額は物品の製造のみの付 与数値を示す。)〕 (1) 年間平均(生産・販売)高 200億円以上 : 60、 65 100億円以上 200億円未満 : 55、 60 50億円以上 100億円未満 : 50、 55 25億円以上 50億円未満 : 45、 50 10億円以上 25億円未満 : 40、 45 5億円以上 10億円未満 : 35、 40 2.5億円以上 5億円未満 : 30、 35 1億円以上 2.5億円未満 : 25、 30 5,000万円以上 1億円未満 : 20、 25 2,500万円以上 5,000万円未満 : 15、 20 2,500万円未満 : 10、 15 (2) 自己資本額の合計 10億円以上 :10、 15 1億円以上 10億円未満 : 8、 12 1,000万円以上 1億円未満 : 6、 9 100万円以上 1,000万円未満 : 4、 6 100万円未満 : 2、 3 (3) 流動比率(物品の製造、物品の製造以外と も共通) 140%以上 :10 120%以上 140%未満 : 8 100%以上 120%未満 : 6 100%未満 : 4 (4) 営業年数 20年以上 : 5、 10 10年以上 20年未満 : 4、 8 10年未満 : 3、 6 (5) 機械設備等の額(物品の製造のみ) 10億円以上 :15 1億円以上 10億円未満 :12 5,000万円以上 1億円未満 : 9 1,000万円以上 5,000万円未満 : 6 1,000万円未満 : 3 (6) 合計 (最高点) 100 別記5 資格の種類別等級区分及び予定価格の範 囲 〔掲載順序 契約の種類 ?数値:等級 ?予 定価格の範囲〕 (1) 物品の製造 ? 90点以上 :A 80点以上 90点未満 :B 55点以上 80点未満 :C 55点未満 :D ? Aは3,000万円以上、Bは2,000万円以上 3,000万円未満、Cは400万円以上2,000万円 未満、Dは400万円未満 注:船舶類にあっては、各省各庁が必要に 応じ、別に公示する方法により示す。 注:国有林野事業特別会計で行う素材生産 にあっては、林野庁が必要に応じ別に公 示する方法により示す。 (2) 物品の販売、役務の提供等 ? 90点以上 :A 80点以上 90点未満 :B 55点以上 80点未満 :C 55点未満 :D ? Aは3,000万円以上、Bは1,500万円以上 3,000万円未満、Cは300万円以上1,500万円 未満、Dは300万円未満 注:船舶類及び船舶整備にあっては、各省 各庁が必要に応じ、別に公示する方法に より示す。 注:国有林野事業特別会計で行う造林にあ っては、林野庁が必要に応じ別に公示す る方法により示す。 (3) 物品の買受け ? 70点以上 :A 50点以上 70点未満 :B 50点未満 :C ? Aは1,000万円以上、Bは200万円以上 1,000万円未満、Cは200万円未満 なお、統一資格に基づき実際に調達を行うに際 しては、適正な競争性を確保するため、他の等 級の競争参加が可能となるような弾力的な競争 参加を認める場合がある。
ソフトウェアの開発など役務を提供することを考えてみる。立ち上げそうそうのベンチャーで売上規模が2億程度の場合どうなるか。一般競争入札の参加資格を上記の表で確認してみよう。
売上が2億位なので30点、自己資本1000万円で9点、流動比率は仮に6点くらいにしておく、営業年数は10年未満だから6点。合計51点。(2)物品の販売、役務の提供のランクをみるとCで、300万円以上1500万円未満ということになる。流動比率が低ければ4点なので、合計49点でD、300万円未満の役務しか提供できない。
ちょっとしたシステム案件ならばすぐに1500万円などは越えてしまう。国のシステムどころか都道府県庁あるいは市町村のシステムでも、そのくらいはいくだろう。そうするとどうなるか。東京界隈にある大手SIベンダーが元請けとして入札して、それを全国のシステム子会社にばらまくという構図になる。地元のSIベンダーは売上においても、自己資本においても、どうがんばってもCにしかならないので、小口の案件を拾っていくしかない。
制度として一般競争入札は、ソフトウェアサービス、役務の提供には向いていない。どんなに技術力があろうがなかろうが規模の大きな会社が自動的に入札に参加できる仕組みなのである。確かに大規模な公共事業、土木事業などは、安定性のためにそのような基準が必要かもしれない。しかし、SIやソフトウェアの世界にはそぐわない。むしろ政府調達におけるこのような実績主義、規模制限はベンチャー育成に足かせとなっていると思う。
じゃあ、どうすればいいのだろうか。どのようにこの制度を変えればいいのだろうか。読者諸氏の力を借りたい。