未来のいつか/hyoshiokの日記

hyoshiokの日々思うことをあれやこれや

孤独なバッタが群れるとき。読了。

凄い本を読んだ。バッタの研究家の前野ウルド浩太郎著。

バッタという昆虫は時として大量発生して草という草すべてを食い荒らしどこかに去って行く。害虫である。そのバッタの生態を研究している前野が「サバクトビバッタの相変異と大発生」という副題の本を書いた。

昆虫好きの少年が昆虫の研究者になってバッタの生態を研究している、その成果について書いた本だと言ってしまえばそれだけなのだけど、なんだろう、このパッションはという熱さを感じさせる変な本だ。

あれは、小学生の頃に読んだ子供向けの科学雑誌の記事だった。外国でバッタが大発生し、それを見学するために観光ツアーが組まれたそうだ。女性がそのツアーに参加したところ、その人は緑色の服を着ていたため、バッタに群がられ、服を食べられてしまったそうだ。私はこのとき、緑色というだけでみさかいなく群れで襲ってくるバッタの貪欲さに恐怖を覚えたとともに、ある感情が芽生えた。
「自分もバッタに食べられたい」
(はじめに)

変態である。いい意味で。研究対象にとてつもない愛を持っている。昆虫が好きで好きでしょうがない。

サバクトビバッタというのは名前のとおりサハラ砂漠などの砂漠などに生息しているバッタで西アフリカから中東、東南アジアにかけて広く分布していて、しばしば大発生し、大移動しながら次々と農作物に壊滅的な被害を及ぼす害虫として知られている。

バッタの大発生のメカニズムは長いこと謎であった。どこからあの大量なバッタが生まれてくるのか。もしそのメカニズムがわかれば大発生を阻止することができるのではないか。

著者は、その問題に研究者として取り組んでいる。

研究室で来る日も来る日もバッタを飼育、観察している著者が、最後には西アフリカに二年間赴任する。フィールドだ。実験室では分からない野生のバッタたちとあいまみれる姿は感動的ですらある。

どんなに著者がバッタを好きかはともかく本書を読んでいただきたい。