enPiT第2回ビジネスアプリケーション分野ワークショップに参加した
産業技術大学院大学で開催された第2回ビジネスアプリケーション分野ワークショップに参加した。昨年、enPiTという産学協同の教育プロジェクトで、スクラムによるアジャイル開発手法のコースを永瀬美穂さんと担当した。その成果報告会。われわれのPBL (Project Based Learning) を受講した4チームのうち、琉球大学学生のチーム、Ryupitが参加してポスター発表をした。
http://www.cs.tsukuba.ac.jp/enPiT/html/workshop201302.html
招待講演は上野 新滋 さん(CeFIL 理事,(株)FUJITSUユニバーシティ 産学官連携グループ長 エグゼクティブ・プランナー)で、富士通の取り組み、JMOOCの紹介など。
連携三大学(筑波大学、産業技術大学院大学、公立はこだて未来大学)からの活動報告、PBL参加学生チームからの発表(3分)とポスター発表。
最後に、指導教員のパネルディスカッション。
壇上からパネリストをぱちり。
パネルディスカッション
各大学ごとに工夫した点などを共有しつつ、今後どうするかなどを議論した。
われわれのチームは、15コマの事前学習で、スクラムの基礎を講義とワークショップ、利用するツール(git/github/Rails/Travisなど)の講義、ミニPBLでチーム編成(チーム名の決定)、何を作るかの議論、そして10週にわたるPBLという形で行った。
学生は、週3コマのチーム作業、3コマの自主的な作業でウェブサービスを作る。毎週土曜日の午前中に全体ミーティングで、各チームごとに、1)今週やったこと、2)デモ、3)来週やること、4)困っている事、他のチームからのコメントなどを貰う。
1週目の発表で、プロダクトバックログはなんですかというような質問が永瀬さんからでる。プロダクトバックログってなんだろうか??メンバーは、授業で習った事なんだけど、まったくそれの重要性を意識していなかったことを理解する。
奇麗なパワポを作る事に一生懸命になって、デモを動かすことがおろそかになる。デモが出来なければ何の価値もないという価値観を学ぶ。パワポを作る時間があったら製品を作ろう。そーゆー事である。Demo or Die
2週目の発表。それではそのサービスのURLを教えてください。localhostでは動くんですが…。アクセスできないウェブサービスってなんの冗談なんだ。デプロイする重要性を学ぶ。
何週目か、デモをするがなぜか、うまく行かない、先週まで動いていたんですが、ということでリグレッションテストやCIの重要性を学ぶ。
毎週毎週デモをするので、少しずつデモがうまくなる。プレゼンがうまくなる。プレゼンがつまらないと誰も聞いてくれない。他のチームの人は寝てるかもしれない。いいね、それ使ってみたいよ、というコメントを貰うために、いろいろ工夫をする。つまらないと全くフィードバックが貰えなくて、サービスがよくならない。そしてプレゼンやプロモーションの重要性を学ぶ。
毎週毎週デモをし、それを10回繰り返す。最終成果報告会は特別に何かを準備するというより、たまたま最後の一回にすぎない。
今回発表した琉球大学のチームもその中の1チームだ。10週間で1000回以上コミットをしてサービスを作った。発表するにあたり、gitのログから、週毎のスプリントの振返りをしていた。最初のスプリントで出来た画面、その時貰ったコメント、実装したものなどなどを週毎にまとめていた。そーいえば、最初はこんな画面だったよね、最後のものとは全然ちがうよなーということを思い出す。
PBLによって、知っているけど出来ない事を理解する。出来る事と出来ない事を理解する。自分では出来ると思っていた事が全然出来ないという事を理解する。毎週毎週デモをしながら学んで行く。この製品の価値はなんですかという質問にあなたが答えられないとしたら一体誰が答えられるのか?その価値を15秒で説明できないとしたら、誰がそれを説明するのか、というようなことを学んで行く。
彼らが、いま、全く別のウェブサービスを作るとすると、10週間のPBLの経験によって、もっと上手に、もっと凄いものを作ると思う。それが10週間のPBLの一番重要な成果だ。作ったものではなく、経験によって獲得した暗黙知、ソフトウェアを作るという事の面白さ難しさ、それが一番重要な成果だと思う。
今回発表した中で、琉球大学のRyupitチームは優秀プレゼンテーション賞を受賞した。おめでとう。そして彼らの受賞こそがわれわれが最もほこる成果なのかもしれない。ありがとう。