未来のいつか/hyoshiokの日記

hyoshiokの日々思うことをあれやこれや

夏への扉、ロバート・ハインライン著、読了

夏への扉[新訳版]を読んだ。

1970年頃の時代を1956年頃に書いていて、その主人公が2000年に行ったり来たりする。こんな紹介をすると陳腐なタイムトラベルものか誤解するむきもあろうかと思うが、そうでもない。

主人公はエンジニアでロボットを設計することを仕事にしている。友人と会社を起こす。創業者兼開発総責任者だ。株の過半数(51%)を持っているのでオーナーでもある。婚約者に婚約記念に株を若干譲渡するところから物語はあらぬ方向へ展開していく。

主人公はおそうじガールという掃除用ロボットを開発しヒットさせる。これってルンバじゃないか。その他、自動製図機(CADみたいなものですな)を発明し、設計の自動化をはかる。1956年ころに書かれたものなので、コンピューターやインターネットの概念は出てこない。

主人公は低体温で眠ることによって、歳をとらないで未来に行く。30歳のまま2000年で目覚める。信託銀行に預けた自社の株券やもろもろの財産はどうなっているのか。自分の起こした会社はどうなっているのか。おそうじガールはどうなっているのか?そして、その特許はどうなっているのか。

2000年の描写は過去の未来だ。主人公は過去の新聞を図書館で調べて自分が冬眠を始めた1970年ころのことを知ろうとする。特許を特許局に問い合わせて調べたりする。

われわれの生きている2000年はインターネットで繋がっていて、特許情報はインターネットで簡単に調査できる。今となっては、そのような未来図を1956年ころに書かれたSFに求めることはフェアではない。むしろ、おそうじガールや自動製図機の発想に拍手を贈りたい。

主人公は未来を信じている。技術の行く末を信じている。そこにこの小説の救いがあると思った。

山下達郎の「夏への扉」はこの小説から来ていると言うことを知った。