未来のいつか/hyoshiokの日記

hyoshiokの日々思うことをあれやこれや

生マグロがすごい

この歳になるまで生マグロがどのようなものかということを知らなかった。生まれてこのかた意識して生マグロを食ったことがなかったからだ。あったかもしれないけど記憶にない。

日頃食べるマグロの多くは冷凍マグロだ。マグロと言ってもいろいろあるのだが、漁場で釣ったマグロは漁船上で急速に冷凍され三崎や築地などの市場を経由して流通する。

話が長くなるので忙しい人は次行ってください。

楽天IT学校の縁で那智勝浦町にある木下水産物株式会社にお邪魔することになった。高校生が生マグロの販売ページを作るためにその取材をするので同行した。那智勝浦に行くのも初めてだし、生マグロの話を聞くのも初めてだ。*1

上野さん(紀伊国屋文左衛門本舗店長)が生マグロを食べたら他のマグロは食べられなくなりますよという話を聞いていたことは聞いていたのだけど*2、正直言っていやそれは大げさだろう程度にしか思っていなかった。

那智勝浦漁港に水揚げされるマグロの漁法は大きく分けて二つあって、一つがはえ縄漁、もう一つがまき網漁である。

はえ縄漁というのは長い縄(幹縄)に餌をつけた多数の縄(枝縄、はえ縄、釣り糸みたいなもの)で釣る漁法である。
まき網漁は大きな網で釣る漁法である。

はえ縄は長いものだと数十キロ以上のものになるらしい。

まき網は一気にガサッととるのでスケールするし多量の魚を確保するのには適している。コストダウンにもつながる。一方はえ縄はまき網ほどスケールはしない。

釣られる魚にとってみるとまき網だと稚魚も成魚もお構いなしに一網打尽だが、はえ縄だと稚魚はかかりにくく主に成魚がかかる。環境に対する負荷は前者の方が大きい。

網にかかってから釣られるまでの間、まき網だと過密な網の中でおしくらまんじゅう状態で魚にストレスがかかるが、はえ縄だと釣り針にかかったままだが泳いでいられるのでストレスがそれほどかからないらしい。マグロの場合、ストレスがかかると体温が上昇して70度近くまでなる場合があるらしい。体温上昇に伴って「やけ」と呼ばれるものが生じ食感を損なう。*3

釣られた魚を漁船で急速冷凍する場合と、船上で殺して冷蔵保存して漁港に運搬する場合がある。後者は一度も冷凍していないので生マグロと呼ばれる。

那智勝浦漁協で取引されるマグロのほとんどがはえ縄漁で採られた生マグロだ。冷凍マグロはほとんど取引されない。焼津、清水、三崎などは冷凍マグロの漁港として知られている。*4

東京で食すマグロの多くは冷凍マグロ(スーパーで売られているものは解凍)と言われている。三崎、清水、焼津各漁港で流通しているものは冷凍ものだ。

さて、はえ縄の場合、マグロをとらえたら一尾づつ神経を壊し血抜きなどをして冷蔵する。一方、まき網の場合は多くは船上で急速に冷凍するか、そのまま冷蔵して漁港まで運ぶ。

冷蔵の場合、冷凍していないので生マグロと呼ばれる。

那智勝浦漁港では生マグロを扱う。(冷凍マグロはほとんど扱っていないそうだ)

生マグロは一度も冷凍しないまま流通する。はえ縄量で一尾ずつ〆ているので味も落ちない。

冷凍ものは解凍するときにどうしても細胞が破壊され旨み成分が出てしまう。

お題目はいいのだが、こればかりは食べてみないとわからない。言語化することが簡単ではない。もちもちだと言われているが、生マグロを食べたことがなければそれも伝わらない。

というようなわけで、生マグロがすごいということがよくわかった見学会だった。



那智勝浦漁協 紀州勝浦産生まぐろ http://marinesoft.sakura.ne.jp/page2.htm

紀州勝浦産生まぐろ』
紀州勝浦産生まぐろ』は、100%はえ縄漁船による天然まぐろであり、漁獲されたまぐろを一本一本丁寧に活け締め処理し、船内において冷水保存(氷温)することにより、漁獲された直後の新鮮さと品質を保ったまぐろです。

*1:id:hyoshiok:20160914:p1

*2:http://www.rakuten.co.jp/bunza/

*3:http://www.pref.tottori.lg.jp/secure/458401/manual.pdf

*4:http://www.market.jafic.or.jp/suisan/ 水産物流通調査の漁港別主要品目別の上場水揚量データがある。これを見ると生のマグロ類(クロマグロ、びんなが、めばち、きはだ、みなみまぐろなど)も多く流通している。めばち、きはだは冷凍ものが多く、びんながは生が多い