未来のいつか/hyoshiokの日記

hyoshiokの日々思うことをあれやこれや

評判獲得ゲーム

ネットワークの匿名性というのはなかなか難しい問題をはらんでいる。

例えばネットワークのオークションで不正を働いたとする。匿名性故に、新しいIDを取得さえすれば、その悪い評判がチャラになる。そのため悪い評判をたててコミュニティからネガティブな評価を受けないようにするというインセンティブが働かない。実社会では、人々は悪いことをすれば社会からいろいろな意味で罰をうけるので、それが抑止力になる。ネットワーク社会ではその抑止力が働かない、働きにくいという指摘である。

匿名掲示板だと荒れやすいのは荒すことによるネガティブな評価が個人に帰属しないので荒さないようにしようという抑止力が働きにくいからだとも言える。

ネットワークのオークションの場合は、不正を防止するような他の仕組みが組み込まれているので、上記程事は単純ではないが…

閉ざされたコミュニティの場合は、評判というのは非常に重要で、人々はその評判のメンテナンスにある程度のコストを払う。

ネットワークのようなオープンなコミュニティの場合は上記のようにネガティブな評判を得ないようにするという事に対するインセンティブはほとんど働かないように見える。ところが実際は、そんなことはない。

どういうことかというと、匿名Aがあるオープンなコミュニティに参加したとする。初期値として匿名Aの評価はプラスマイナス0である。匿名Aの影響力は0である。その時点で他のコミュニティのメンバーと取り引きをすることは非常に難しい。なぜならば匿名Aにはメンバーが納得する信頼性を持っていないからである。匿名Aはメンバーと取り引きをしたいならば、メンバーから信頼を集めるような行動をとらない限り相手にされない。ポジティブな評判を獲得しようとする。匿名Aがより有利な取り引きをしようとすればするほど、ポジティブな評判を獲得するような行動をとらなければいけない。

それでは、匿名Aがずるをしてメンバーに損害を与えるような行動を取らないのだろうか?取る可能性はもちろんある。しかし、それを行えば、評価は当然マイナスになり、その後に取り引きはできなくなる。ある意味一回しかつかえない究極のわざである。

もちろん匿名Aが名前を変えて匿名Bとしてコミュニティに参加する可能性はある。その場合も、信頼を勝ち取るまではポジティブな行動をとらなければならない。ずるをして得られる利益が、ポジティブな行動(支払うべきコスト)よりも十分小さければ、積極的にずるをするインセンティブはない。

むしろ、信頼を勝ち得ることの利益の方が大きければ、ネガティブな行動を取るよりも、ポジティブな行動をとって、その信頼を維持しようと努めるだろう。

コミュニティにとってのラベル名前と実社会の名前と一致するかどうかはコミュニティにとっては重要なことではない。コミュニティに提供した価値によって評価される。その信頼は失われるのは容易だが獲得が難しいとすると、匿名Aは匿名Aとしての信頼を保持するために、名前を変えて匿名Bになることに積極的な動機はない。ということで、コミュニティはより多くのポジティブな評価を持つもの、信頼の高いものになるようなインセンティブがはたらく。

オープンソースのバザールモデルは評判獲得ゲームでより多くの人の評判を得た人が実質的なリーダーになって、そのコミュニティの優しい王様になるのである。