グーグル、ネット覇者の真実を読んだ
グーグルのことを知っているようでいて、よく知らなかったということがよくわかる一冊である。恥ずかしながらインターネットの会社に勤めていて毎日毎日グーグルのことを使っているのに不勉強のそしりを逃れられない。
著者はハッカー倫理を紹介した書籍『ハッカーズ』のスティーブン・レヴィ。
秘密主義で知られるグーグルに内部取材を許可され内部の人間にしか知りえないインサイダーとしてのドキュメントをものにしている。その意味でこれはグーグルにとっても、外部のもの(われわれ)にとっても貴重なエスノグラフィー(民族誌)となっている。
『わたしのインサイダーとしての視点は、グーグルの二つのブラックボックスー検索エンジンと広告システムーを開けるカギとなり、これまえ知られていなかった多くの事実を明らかにすることができた』019ページ
そして、著者が言うようにこの二つのブラックボックスに関して極めてわかりやすく明快に説明することに成功している。同社の価値観、行動原理が明示的に示されている。
ページとブリンという若者が作ったこの革新的な会社、世界をテクノロジーで変えることを文字通り希求している若者が、様々な困難、社会的なコンフリクトとの葛藤のなかで、グーグルをどうしていくのかをいきいきと描写している。28歳の若者には老練なCEOエリック・シュミットを必要とした。
グーグルを秘密主義にしたのは、広告(AdWordsとAdSense)という金の成る木を同業他社(マイクロソフト他)にIPOまで知られたくなかった。
そして、快進撃のインターネットの覇者も、中国進出では挫折し、様々なサービスではプライバシー保護団体からの非難をうけ、米国独禁法で政府の調査も受けている。邪悪にならないというのをモットーに掲げているが、一企業が多大な情報を管理することに関する懸念を持つ人は少なくない。
アルゴリズムによる情報の整理をとことん追い求めたグーグルが、Facebook/Twitterを始めとするSNSによって挑戦を受けている。グーグルにはオーカット(Orkut)というSNSが存在していたにも関わらず、その重要性を見抜けなかった。イノベーションのジレンマの典型例なのかもしれない。
インターネットのこれからを考える上での貴重な一冊である。