未来のいつか/hyoshiokの日記

hyoshiokの日々思うことをあれやこれや

辞書を編む。辞書の仕事。読了。

辞書を編む (光文社新書)辞書の仕事 (岩波新書)を読んだ。

前者は「三省堂国語辞典」の編纂者の飯間浩明氏が著者で、後者は岩波書店の辞典担当者で、「広辞苑」や「岩波国語辞典」の仕事をしていた増井元氏が著者である。前者のタイトルは舟を編むを意識してつけられた。

辞書を編むは、「三省堂国語辞典」(三国)の編集委員の立場から辞書作りについてしるしていて、「編集方針」、「用例採集」、「取捨選択」、「語釈」、「手入れ」、「これからの国語辞典」という章立てになっている。
三国は見坊豪紀(けんぼうひでとし)が編集主幹をして、1960年に初版が出版された。見坊は生涯145万件にもおよぶ用例を集めたと言われている。
飯間氏は第6版から編纂に参加している。そして、本書は第7版の開発と平行して書かれた。第7版は2014年1月に発売で、本書は2013年4月発行だ。
編纂者として、編集方針を記していて、実例に基づいた項目、中学生にでもわかる説明を大方針にしている。三国は見出し数8万ほどの辞書なので、どのような項目をたてるかたてないかが問題になる。徹底した用例主義に基づき新しい用語も採用していく。
実例をふんだんに使っての解説は、いちいち面白い。新語の採用だけではなく、語釈や、用語の手入れなどの話も面白い。「愛」をどう説明するのか。第6版では[男女の間で]好きで大切に思う気持ち。「ーをちかう」と説明されているが、「男女の間」だけなのか、同性愛は愛ではないのか、などなどの観点から手直しが入っていく。愛を手直しすると、恋人とか逢い引きとかも「男女」という限定を外さないといけなくなって、いろいろと大変である。

「辞書の仕事」は、出版社で辞書の編集に携わった経験から、辞書の周辺の知識についてしるしていて、例えば紙の選定の話とか、広辞苑は80ミリの厚みがあって、それが製本の限界だとかというような話も面白い。また、他社の辞書たとえば三国などについても「机上に備えると言えば、『三省堂国語辞典』(『三国』)もその一冊です。編者見坊豪紀(けんぼうひでとし)先生の現代語の観察が行き届いていること、生きのよい新しいことばと用法が、調査の裏付けをもって辞典に反映されていることは、誰も知っていました。私たちは、改訂版に何か新語を収載しようとするとき、そのことばが『三国』に載っていなければ、『三国』に先んじて収録することはないと考えたものです」と最大限のリスペクトをしている。

このような辞書編纂にかかわる考え方を双方の陣営から聞けるというのは面白い。

今後、辞書も電子書籍を前提に編纂されるようになると、インターネットのフリーな辞書との競合は避けられなくなる。はたして紙の辞書は生き残れるのか。これからの国語辞書の行く末に関してはちょっと議論が薄いように感じたが、それはないものねだりなのかもしれない。

この2冊と舟を編むを一緒によむと辞書作りの世界にどっぷり浸かれて、萌え〜である。お勧めしたい。