天平の甍、井上靖著、濫読日記風、その45
天平の甍 (新潮文庫)を読んだ。
天平5年(733年)、遣唐使として唐に渡った若い僧たちの物語である。仏教の経典を写経し、日本に持ち帰ることに命をかける僧たち。唐の高僧鑑真を伴って祖国に帰るために幾度となく困難に見舞われる。
仏教を日本に伝えるために、経典を写経しそれを日本に持ち帰ることと、高僧を日本に招くことが大きな使命になる。鑑真は何度も渡日を試みるが、ことごとく失敗する。命がけの物語だ。
遣唐使として唐にわたって無事に帰国することが当時いかに困難だったか、命をかけた試みだったかということがよく分かる作品だ。
唐招提寺に古寺巡礼をしてみたいと思わせる作品だった。
インターネットのない時代に経典がいかに貴重だったのか。写経によって一文字一文字書き移すという作業がどれほど重要だったのか。経典が命を賭して守るべきものだということがよくわかった。
普照らが持ち帰った経典の巻数、情報量はどのくらいだったのだろうか。何百巻、何千巻だったのだろうか。一巻あたり10万文字とかそのくらいのオーダーなのだろうか。多く見積もって数百キロバイトとかくらいだろうか。いずれにせよ、インターネットの時代であれば、秒の単位コピーできる情報量だ。情報の価値がほぼゼロになったと当時の人々が聞いたらどんなことを思うのだろうか。
1000年単位の時間を考えるいいきっかけになった。
オススメです。
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