未来のいつか/hyoshiokの日記

hyoshiokの日々思うことをあれやこれや

切符を買う

最近では切符を買う人は珍しい。

飲み会の帰りにJRの切符を買った。「あれ、よしおかさん私鉄(沿線におすまい)ですか?」といきなり核心を突く質問。「いや、JRですよ…」「Suicaは便利ですよ」「そーですね…」

Suicaは便利である。Suicaを知らない人(そんなやつはいるのか?)のために説明するとJRが発売しているICカード内蔵の定期券(あるいはプリペイドカード)である。乗り越し運賃精算を自動改札で自動的にやってくれるので、いちいち切符を買わなくていい。ピッで便利である。間違いなく便利である。

運賃を精算するためにいつどこの駅で乗ったか?降りたか?の情報がそのICカードに記録される。定期券であれば、通常の経路以外の駅からの乗車、降車にも当然対応している。Suica対応の自動改札口がないとその乗車記録降車記録ができないのでいちいち駅の窓口で処理をしてもらわないといけない。例外的に不便である。

連続する定期券を2枚持っているような場合にも対応できない。連続する定期券というのは、A->B->Cという経路での定期は普通A->Cという風に購入するが、あえて、A->Bという定期とB->Cという定期に分割するのである。なんでそんな面倒なことをするかというと、通常は連続する2枚の定期よりも一枚の定期の方が安いのであるが、首都圏などで沿線に競合する私鉄があったりすると例外的に2枚にしたほうが安くなる場合があるのである。(まあ、なんとマニアックな話である)

ちなみにA->B、B->CではなくてA->B、B'->CでBとB'の間があいていると単なるキセル乗車なので違法(?)である。

閑話休題

はっきり言ってしまえば誰がいつどこで乗り降りしたかの情報がすべてその「便利」なICカードに記録されているのである。当然なんらかの機械を利用すれば見ず知らず誰かにあなたの乗車降車の記録があきらかになるのである。プライバシーというとことさら大げさな感じになるけど、まあ、そーゆー話である。(余計なお世話であるけどね)

昔は、あなたが不穏な思想の持ち主で、その筋では非常に著名な人物として、国家権力(ぷっ)というか公安(って何)かなんかに尾行でもされない限り、どこで乗車したかとかどこで降車したかなどの情報は間違っても収集されなかった。高度に訓練されたエキスパートを一人ないし複数張り付けなければ収集できなかったような情報(おおげさだな(笑))をいとも簡単にわれわれは提出しているのである。

テロリストという不穏な思想の持ち主を効果的に取り締まるためには国民全員がいつどこに移動したかの情報を一元的に管理すべきだという立場の方であればSuicaというシステムは実に効率的な、つまり実装運用コストの安いシステムである。非常にすばらしいシステムである。間違いない。

(私自身は国家安全のために国民を監視すべきだ、そのためにテクノロジーを有効(?)に活用すべきだなんてことは露ほども思っていない。余談だけど)

多くの人はそんなことは一秒も考えずに便利だからSuicaを使う。わたしも便利だと思う。便利だけど今は使っていない。将来はひょっとしたら使うかもしれないが今は使っていない。それだけの話である。

携帯電話は便利である。わたしの携帯にはGPSがついているので自分がどこにいるのかをかなり精密に地図で教えてくれる。便利である。携帯電話のシステムは端末(わたしの携帯電話のことだ)がどこにいるかを常に監視していて、その端末(わたしの携帯電話だ)に誰かが電話をかけたとき、適切にどこにいるかを把握してネットワークのコネクションを確立する。携帯の電源を入れるということは世界に向かって自分はどこにいるかを文字通り発信しているのである。

携帯電話のネットワークをハックすることが仮に可能であればわたしがいつどこにいるかリアルタイムでトレースすることができる。間違いない。

わたしは便利だから携帯電話を使う。誰かに監視されるかもしれないというリスクについてはほとんど考えたことがない。その考えたこともないリスクよりも、具体的な便利さのゆえに携帯電話の電源をいれる。

わたしは便利だからクレジットカードを使う。クレジットカード会社にいつどこで何を買ったかをわたしは精密にトレースされている。その情報はわたしのプライバシーではあるがそのプライバシーを提供することによって現金を持ち歩かなくてすむという便利さを享受する。プライバシーが侵害されるという可能性を心配しろということはいらないお世話だ。そもそもそんなことを考えたことも心配したこともない。

会社の出張時には努めて現金ではなく(会社の)クレジットカードを利用するようにしている。ホテルの精算、運賃、レンタカー代、飛行機代、タクシー代その他もろもろ必要経費はなるべくクレジットカードを利用する。会社への旅費精算のときその利用履歴が使えるからである。いつ何にいくら支出したかの情報が必要だからである。出張というパブリックな活動にはある意味プライバシーはなくて、XXXという業務のためXXXというところに行ってXXXという支出をした、というような情報を会社に開示する必要がある。その証拠を収集するためにクレジットカードを利用する。クレジットカード会社がわたしにかわって利用明細を作ってくれるのである。便利である。

そーゆーことを一切合財十分理解した上で私たちはSuicaやら携帯電話やらクレジットカードやらその他もろもろの便利なものを利用しているだろうか?わたしはほとんど考えたこともない。

知らない誰かに、わたしがいつ何をしたか、どこにいたか、何を買ったか、などなどを無条件に知られるということは、ちょっと気持ち悪い。ほっておいてほしい。

わたしはSuicaを持っていないが持っていないがゆえにちょっと考えてみた。皆さんはどー考えるのだろうか(What do you think?)