未来のいつか/hyoshiokの日記

hyoshiokの日々思うことをあれやこれや

CE Linux Forum Technical Jamboree 4

YLUG http://ylug.jpメーリングリストが止まっているのでアナウンスができなかったのだけど、CE Linux Forum (CELF) Technical Jamboree 4 http://tree.celinuxforum.org/CelfPubWiki/JapanTechnicalJamboree4 の夜の部に参加した。CELFのご厚意でYLUG/カーネル読書会と合同で夜の部開催となった。(あ、でもピザとビールはなかったけどね)
カーネル読書会の宣伝をしつつ、わたしのお題は先日作った「Cache Pollution Aware Patch」である。いろいろ性能データをまとめて、成果を30分くらいでお話して、質疑応答となったのだが、非常にディープな議論ができてよかったと思う。cacheの話をごりごりしたのだけど、ハードウェア実装者からの突込みがいろいろ出て、Linuxという共通の土壌の上で会社を超えた議論ができたのは非常に楽しかったし、面白い感覚だった。
Linuxを携帯に組み込む」というパナソニックモバイルの水山さんのお話も非常に興味深かった。いろいろなご苦労をお話されたわけだが、組み込みだとメモリの制約がきついので、サーバー系にはないご苦労がいろいろある。わたしなんかは、「最近のサーバーなんかは4GB超えのメモリを持って…」なんてことを平気で言ったりするのだけど、「おいおいこっちは4MBの世界だぞ」という突っ込みが入り、世界が違うというのがよく分かる。水山さんが最後に問題点を指摘したスライドを見せて、「問題点です。Linuxのいいところは一人でなやまなくてもいいことですね」というところが印象に残った。
オープンソースはみんなで問題点を共有できることが最大のメリットとなる。バザールモデルの本質である。そのようなパラダイムの中で自分の問題解決力を加速する方法は、情報を秘匿するのではなく、いち早く問題を発見して、それを公開するというプロセスである。企業間で開発競争をしているという常識から言うと、開発上の問題点を公開するなどというのはありえない。同業他社に自社の弱点をさらすなんていうことはありえない。しかし、Linuxという共通基盤の上では、その問題点は共有されうる。むしろ積極的に公開し共有したほうが「得」であるというパラダイムである。それを長いことプロプライエタリな世界にいた人が理解し実践することは簡単ではない。日本のエスタブリッシュメントな大組織がそれをそもそも拒むだろう。その常識にチャレンジしているのがCELFの人達なのである。
日本OSS推進フォーラムのステアリング・コミッティでソニーの上田さんと初めてお会いして以来、どうにかご一緒できないですかとお話していたのだが、その夢が今日実現した。一歩前進である。CELFの人達は家電、組み込みの世界の中で、Linuxパラダイムを会社の中、偉い人達に理解してもらうのに苦労をされている。ソフトウェア業界の中でもオープンソースパラダイムを理解し実践しビジネスに応用している企業というのは多くはない。企業という枠組みで考えれば、従来型のパラダイムでの開発をしているほうが圧倒的に多数である。その意味で上田さんたちと共通の道を歩んでいる。オープンソースパラダイムの中で企業の枠を乗り越えて技術的な議論ができるというのはとっても心地が良い。そーゆー良い時代になったのである。そして日本の東京という地域はカーネルハッカーにとって仲間を見つけやすい土地になりつつあるような予感がする。