バッタ博士の新著、バッタを倒しにアフリカへ、読了
バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)を読んだ。
バッタの研究家の前野ウルド浩太郎著の「孤独なバッタが群れる時」は凄い本だ。日記にも書いたし、講演を聞きにも行った。 *1 *2
そして本書は、前著にも劣らぬ熱い本だ。バッタに全身全霊をかけている。著者はバッタと一体になっていると言っても過言ではない。
前著に比べて著者が撮影した(あるいは同僚に撮影してもらった)写真それもカラー写真が増えている。それだけフィールドワークに余裕が出てきたのか?研究力が増してきたのか?よりしたたかになったのか?研究者としての成長が垣間見られる(気がした)。
バッタとは何か、なぜ彼はバッタを研究するのか、その熱い思いを渾身の力を振り絞って記す。その熱量に圧倒される。この男、ただ者ではない。
彼は小学生の頃読んだ科学雑誌の記事で、外国で大発生したバッタを見学していた女性観光客がバッタの大群に巻き込まれ、緑色の服を喰われてしまったというエピソードを読んで、バッタに恐怖を覚えるとと同時に、その女性を羨ましく思ったと記している。(4ページ)
古くからバッタは大量発生すると農作物に甚大な被害を及ぼし、人々から恐れられていた。
彼はバッタ研究者として、その大量発生のメカニズム解明を目標に日夜研究をしている。そしてその研究の場を実験室ではなくて、アフリカのモーリタニアとした。
人類はバッタがなぜ大量発生するかをまだ解明できていない。そのため、有効な防除策を持っていない。農業被害を防ぐための唯一の方法が農薬による駆除である。しかし農薬の散布は動植物に多大な環境的負荷を与えるので好ましくない。それ以外の方法の開発が望まれる。
現場を見ないことには有効な方法は開発できない。バッタ博士がモーリタニアに行くことは必然であった。バッタに喰われることを夢見ていた若き研究者の奮闘記である。
金はないが夢はある。
研究費を得てモーリタニアに渡ったバッタ博士を待っていたものは大干ばつであった。干ばつだとバッタが生育しないので大量発生しない。バッタがいないことにはバッタ博士は無力である。単なる蟲好きおにいちゃんである。そこから彼のサバイバルゲームが始まる。
ブログを書く、出版をする、研究費を得るために京都大学の白眉プロジェクトに応募する。
第7章「彷徨える博士」に京大総長との面接の場面がある。この場面を読んでバッタ博士を応援しないものがいるだろうか。京大総長もすごい。バッタ博士を選ぶ伯楽(審査委員)もすごい。
アフリカでしばしば大発生し、農作物に深刻な被害を及ぼすサバクトビバッタ。防除のために巨額の費用が投じられているが、未だに根本的な解決策は見出されていない。その謎に包まれた生態を調査するため、単身、西アフリカ・モーリタニアに渡った日本人がいる。「愛するものの暴走を止めたい」と語る、野生のサバクトビバッタ研究者、前野ウルド浩太郎、その人である。
サバクトビバッタを追って | ドキュメンタリー | K.U.RESEARCH
ともかく熱い。一読をお勧めする。
読め。